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「馬鹿にしないでよ!」山口百恵、中森明菜、森高千里…日本の“アイドルたち”は何に怒ってきたのか?

J-POPから見るニッポン

2022/06/27

genre : エンタメ, 音楽

 寝ても覚めても暗いニュースばかりでうんざりである。そこに容赦なくやってくる梅雨&猛暑。ああもうジメジメするし髪は爆発するし暑いし、ムカつくムカつく、ストレスストレス! 長い自粛生活でコミュニケーション能力はガタ落ちしているから、こんなときにチクリと面倒なことを言われたら、憤りが暴発しヘンな怒り方になってしまう!

 怒りの言葉を上手に選んだり、気持ちを収めたりするのは本当に難しい。そんなとき、Adoの『うっせぇわ』のサビを心で歌うと、フッと収まると聞いた。試しに歌ってみる。

「うっせぇうっせぇうっせぇわ あなたが思うより健康です」

 なるほど。確かに……!

「日常のイライラ」に効く名曲たち

『うっせぇわ』がリリースされたのは、コロナ禍のど真ん中、2020年である。攻撃的な言葉の巧みなパズル! 懐かしい価値観(「空いたグラスがあれば直ぐ注ぎなさい」など)が描かれちょっと意外だっだが、重要なのは太い歌声とキャッチーなサビ。「ほっといて」でもなく「うるさい」でもなく、思わず口から出ちゃった的な、投げつけるように歌われる「うっせぇわ」! これが閉塞感に苦しむ時期にバシッとハマった。

 この曲と2020年のドラマ『半沢直樹』の大げさなほどの台詞バトルは、多くの人が抱いていた鬱憤や怒りを代弁し、その発散に大いに役立ったと思う。まさにアンガーマネージメント・エンタメ!

Adoの『うっせぇわ』

 2022年にはアイドルグループBEYOOOOONDSが『ハムカツ黙示録』という、そのものずばり「アンガーマネージメント」をテーマにした楽曲を発表。こちらは『うっせぇわ』よりもっと日常的な「はあムカつく(ハムカツ)」。「ああ、わかるわー」と共感し、クスッと笑うことができた。

 ありがたい。今なお続くこのイライラモヤモヤを軽減できる歌はもっとないものか。そもそも歌を「口ずさむ」の「ずさむ」は、古くは「荒む」とも綴り、「荒ぶる」という意味があったそうだ。ならば歌の力を借りて荒ぶってスッキリしよう!

 社会に対して憤り、世の中に物申す名曲は数多ある。その中で今回は、もう少しミニマムな視点の「日常で引っ掛かるイライラに効く」名曲を探していこうと思う。

 ただでさえ暑い夏、カーッと血が上る回数が減りますように。

山口百恵と中森明菜の“激おこソング”

 グジグジ不満ばかり言う人への怒りに対処したいとき頼りになるのが、70年代~80年代、昭和アイドルの激おこソングである。「強気な女の子がふがいない彼にタンカを切る」という恋愛設定が多いが、歌詞がとにかくストレートなので、聴いても歌っても気持ちがスッキリする。特に山口百恵と中森明菜は外せない。

 山口百恵の「馬鹿にしないでよ!」と睨む『プレイバックpart2』。

1978年、第9回日本歌謡大賞で『プレイバックpart2』を歌う山口百恵 ©共同通信社

「はっきりカタをつけてよ!」と迫る『絶体絶命』。

「かっこ」と6回も連呼し、トドメに「かっこばかり 先ばしり」と言い放つ『ロックンロール・ウィドウ』。

 70年代前半の歌謡曲では、女は耐える、待つ。そうでないならヤサグレ社会から逸脱するという極端な選択を強いられがちだった。しかし百恵の歌は、凛と面と向かって言いたいことを言う。叱る! どれを聴いても「よくぞ言ってくれました!」と拍手したくなる。

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