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ファインダー越しに見たエリツィン元大統領の不自然な指

 とくに体の小さい子供らにとっては格好の探検場。せまい戦車や車両内に潜り込み、でっかい戦車砲弾の空薬きょうやロシア兵のレーション(戦闘用糧食)や食べ残しのビスケットや空き箱を発見しては大はしゃぎ、お祭騒ぎであった。

 しかし、さすがにブービー・トラップ(しかけ爆弾)はもはやチェック済やろうが、所詮破壊された車両である。車体には大小さまざまな弾痕があり、それがめくりあがり、けっこう鋭利な刃物状態の弾痕もありそんなとこに体ぶつけたり、素手でつかんだらしゃれにならん。

発煙弾発射機の一部や大小の空薬きょうを発見し大はしゃぎ 撮影・宮嶋茂樹

 現に今のプーチン・ロシア大統領の後見人だった故ボリス・エリツィン元大統領は子供時代ドイツ軍の残した手りゅう弾を分解して遊んでいるうちに暴発、左手の指2本を吹き飛ばされた。ワシがエリツィン大統領を撮ったのは1995年5月の1回きりやが、そのときにファインダー越しに覗いた彼の指が不自然だったことが今も印象に残っている。

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燃料不足で車での脱出ができなくなる恐れも

 しかしそんな市民の歓声の陰で深刻な問題が進行中であった。ウクライナ南東部での一進一退の攻防戦、そしてそんな東部戦線にウクライナ軍の兵力を集中させぬよう、嫌がらせのようにしつこく続くここ首都への巡航ミサイル攻撃、さらに市民にはガソリン不足が心配の種だったのである。

152mm自走榴弾砲がもはやジャングルジム 撮影・宮嶋茂樹

 もちろん燃料は重要な戦略物資である。軍に最優先で回されているのはいうまでもない。3カ月前ですら1回20リッターという数量制限までしていたくらいだから、潤沢にあったわけでもないのに、このまま市内に戻ってくるクルマが増え続ければ、さらにガソリン不足は深刻化し、クルマはあっても走れない事態になる。ガソリンだけでない。ヨーロッパに多いディーゼル車用の軽油、ガソリンと併用のLNG(天然ガス)も不足し始めているのである。

 可能性は限りなくゼロに近いが、このままロシア軍が再び首都へ向けて進撃を開始したら、今度は燃料不足のためクルマでの脱出ができなくなる恐れもあるのである。

 しかし最大の問題はいまだ侵略者が祖国を蹂躙し続け、居直っていることであるが……。

巡航ミサイルにまたがろうとする少女。鬼才S.キューブリック監督による映画「博士の異常な愛情」を思いおこした 撮影・宮嶋茂樹