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《報道カメラマンが見たウクライナ》「これが戦争当事国の首都かいな…」キーウで蘇りつつある“日常”と陰で進行中の“深刻な問題”

《報道カメラマンが見たウクライナ》「これが戦争当事国の首都かいな…」キーウで蘇りつつある“日常”と陰で進行中の“深刻な問題”

2022/06/12

genre : ニュース, 国際

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 せやけどよう考えたらこれが普通のヨーロッパの都市にもどりつつある姿。喜ばしいことやないか。

当時は恐怖に震え、空襲警報と爆発音に怯えていた

 3カ月前、不肖・宮嶋がロシア軍侵攻後初めてキーウ市に潜入した時は道中も市内も検問だらけ、クルマも走ってないわ、走ってても軍用車ばっかやし、人も歩いてないし、歩いてても完全武装の軍人ばっかやったやないか。

 450万の人口の半数近くが首都を脱出、商店もレストランもぜーんぶ閉店、雪舞う通りがいまやTシャツ姿の家族連れがかっ歩しとるのである。あのゼレンスキー大統領が巣ごもりしているという噂の大統領府のすぐ近く、不肖・宮嶋が草鞋を脱いでいた宿の隣のビアガーデンも1ヵ月以上1度も灯りが点くことがなかったのに、今は日も高いのに、市民がジョッキを重ねているのである。

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BMPの、おそらくジャベリンミサイルにより吹き飛んだ砲塔を興味津々のぞきこむ 撮影・宮嶋茂樹

 当時、残った人々は町中に轟く空襲警報と爆発音に怯え、凍てつく防空壕のなかで、恐怖に震えそれが終わるのを待つしかなかったのである。35時間もの外出禁止令期間は一切外出できず、不便な暮らしに耐えるしかなかったのである。

戦車や火砲の砲身が遊具代わりに

 そりゃあ確かに今も夜間外出禁止令は継続中や。6月現在は23時から6時までは特別な許可のあるものしか外出できないし、ロシア軍はウクライナ軍の兵力を激戦地である東部戦線に集中させないよう時折嫌がらせのように巡航ミサイルぶちこんできよるが、そんな苦難も恐怖も3月前と比べたら、戦争が日常になってしまったキーウ市民にとっては平時とおんなじである。

すでにミサイル不足に陥ったという噂のロシア軍、そりゃあこんだけ打ち続ければそうなる 撮影・宮嶋茂樹

 そんなキーウ市内のところどころ、ここミハイリフスカ広場や、あの8人が新型爆弾で犠牲になったレトロ・ショッピングモールなどにウクライナ軍が鹵獲したり破壊したロシア軍の戦車、自走砲、装甲車にミサイルや武器がまるでトロフィー(戦利品)のように展示されてるのである。

 大は戦車に巡航ミサイルから小はロシア軍が残していった食料や衣服まで、まだガソリンと焦げ臭いにおいを漂わせながらである。そんな物騒なもんが日々増え続け、それにつられ、老若男女のキーウ市民が集いつづけているのである。そして戦車や火砲の砲身を鉄棒や平均台などの遊具がわりにして、歓声があがるのである。

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