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平野 なんというか、凄まじい方でいらっしゃいました。

小柳 報道陣が使いやすいフレーズを、必ず希林さんから仰ってくれた。ほんとうに頭のいい方でしたね。

大女優が突然ギュッと手で…「口ふさぎ事件」

――取材への対応で人柄が出る。

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小柳 勝新(勝新太郎)さんも大物感がすごかったですよ。お父さんの杵屋勝東治さんが亡くなったと聞いて浅草のご実家に伺ったら、家の中に招き入れてくださった。「親父の死に顔がすごいキレイだから見てくれ」って、まだ棺に納める前のお父様の前で、(中村)玉緒さんと一緒にお話を聞かせてくださったのを思い出しますね……。冬場で、外で待機している取材陣に温かいお茶をふるまったりなさってた。

平野 歌舞伎界の方や、落語界の方、特に林家三平さんのところなんかは、私たち取材陣へのそういうお心遣いに長けてたわよね。

 そういえば、高畑淳子さんの「口ふさぎ事件」っていうのがあって!

 息子さんのトラブルがあったとき、ずっと高畑さんが表に出て対応をしてくれていて。しばらく間を置いてから、高畑さんの舞台の製作発表の会見があったんです。もちろん舞台のコトについてはOKだけど、そのほかのコトについては訊いてはならないっていう規制があるなかで、どうしても私たちの仕事としては最近の息子さんの話を訊かなきゃならない。だから舞台の設定にかこつけて「親子の関係というのは」、とか「家族というのは」なんて質問をしていくわけです。

 そうしたら高畑さん、目で「ううん、その質問はダメ」とやったあとに、突然ギュッと私の口を手でふさいだんです。

息子の不祥事に関して会見した際の高畑淳子

――質問への答えはなくてもワイドショーの「画」としては使いやすいですね。

平野 そうなんです。これがまったく嫌な感じではなくって、その場に笑いも溢れて。息子さんを思う母として、「あなたもう頼むからやめてちょうだい」ということが充分にあらわれていたんです。きっとご本人も、それがどう見えるかということは良くおわかりになっていたんだと思います。

 会見終わってから、高畑さんは手で「ごめんね」というポーズをしながら場を去っていきました。

©文藝春秋 撮影/深野未季

火野正平、山城新伍…独特な対応

――騒動の最中にある芸能人の対応として、際立っていました。

平野 火野正平さんもそこは見事でした。十何人目かの「愛人」が発覚して京都の太秦まで取材にいったら、火野さんがパッとプラカードを出してそこには「私はセリフ以外喋りません」って書かれてて(笑)。拒否はするけれど、お茶目だし、「画」にはなりやすいようにしてくれたんですよね。

小柳 その点、山城新伍さんは独特だったわよね。囲みの取材などには応じるけれど、必ずいつも暴言を吐くので有名でした。お葬式のときの「囲み」って私たちが誰に取材をするのか決めるわけではないんですね。ディレクターが芸能人にお願いをして、囲み会見の場所に案内してくる。