――「お坊さん」は清廉潔白でものの道理を説く人、というイメージですが、寂聴さんは「酒も飲むし嘘もつくけど、セックスだけはしていない」と、尼さんとしての“ダメっぷり”と矜持を率直に明かされていました(映画『瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと』より)。
瀬尾 「人生一度きり。だから、心が要求することはみんなしていい」とよく言っていました。「不倫だとしても恋愛のカミナリが落ちたなら仕方ない」とも。
瀬戸内は何に対しても全身全霊で打ち込み、楽しんでいました。他人が考えた「善悪」でなく、自分の心に従って生きていたように思います。
瀬戸内寂聴の“語り部”を続ける理由
――瀬尾さんは寂聴さんの“語り部”となっていると思います。プレッシャーはないですか。
瀬尾 瀬戸内が亡くなったとき、横尾忠則さんがすごく気にかけてくださって、「落ち着いたら瀬戸内さんとの思い出を話してください。それが瀬戸内さんにとっても供養になります」とメールをくださいました。
それに私自身、「瀬戸内寂聴 秘書」という肩書きがなかったら何者でもないと言いますか、私は瀬戸内ありきの自分だと思ってるんです。なので「瀬戸内の話を聞きたい」と言ってくださることは、私にとってもありがたいことだと思っています。
――瀬尾さんが楽しく思い出話をしてくれたら、寂聴さんもきっと喜ばれますよね。
瀬尾 「私のことをどんどん話しなさい。あんた、今がチャンスよ!」と言うでしょうね(笑)。
正直まだ心の整理がつかず、瀬戸内の写真や動画を見返すことができずにいます。でも瀬戸内は、「面白い話をしてみんなを喜ばせてあげて」と言う人。私もそろそろしんみりモードから脱却しなくちゃと思っています。