ジャズ喫茶出身のドリフだからこそ、間が取れる
―― 『8時だョ!全員集合』は、まさに舞台の生放送というスタイルでしたよね。そのスタイルは、ドリフのメンバーにとってはどんな感じだったんでしょうか。
仲本 僕らはテレビの収録より、お客さんを入れた舞台のほうがやりやすかった。元々ドリフは、ジャズ喫茶という舞台出身だから、お客さんの前でやる方が好きなんですよ。無言のテレビカメラに向かって芝居するというのは、間がとりにくい。どうしても同じ間になってしまうからね。お客さんがいれば、目の前のお客さんの息づかいを聞いて、それに乗って芝居すればいいから、手ごたえがある。
―― その頃は毎週の『全員集合』があって、さらに日劇や国際劇場といった大舞台にも出てましたよね。
仲本 僕らにとっては同じ舞台だから、特別に構えることはないです。ただね、日劇とか国際劇場には正月とゴールデンウィークに出るんだけど、そのときだけは『全員集合』も前もって収録しとかなきゃいけない。だから、めちゃめちゃ忙しくなるんですよ。『全員集合』は1回の放送に3日かけてたんだけど、そのときだけ1週間に2本やるの。もちろん、同じ時間かけるんですよ。だから、あのころはもう休む暇なんかなかったよね。
志村は誰よりも新しい笑いに貪欲なんですよ
―― 『全員集合』の途中で、メンバーが荒井注さんから志村けんさんに変わりました。付き人時代の志村さんの印象はありますか?
仲本 志村はやる気があったから、付き人やりながら自分でコンビ組んで、営業の仕事もしてたんです。本当に一生懸命でしたね。コンビのネタは、志村が全部考えてたんだよね。でも、志村がウンウン考えてる横で、相方は新聞の求人広告見てたんだってさ(笑)。そういうところは苦労してるし、荒井がやめて志村が入ったときも、慣れるまで大変だったと思うよ。まさに志村は努力家だよね。
―― 仲本さんが感じている、志村さんの魅力って何でしょう?
仲本 誰よりも新しい笑いに貪欲なんですよ。とにかくいろんな笑いや音楽を見たり聞いたりしてましたね。それを取り入れるのがすごく上手かった。ほら、早口言葉の音楽があるでしょ。「生麦 生米 生たまご イェー!」っていうの。あれも、志村が「これがいいんじゃないですか」って言うんでそうしたんだよ。
―― 加藤さんの魅力とはまた違いますか?
仲本 加藤は天才だもん。思わず口について出ることが面白いし、いるだけでホッとするとこもあるしね。テレビに出始めのころなんて、ほんとにかわいくて、いい男でしたよ。今でいうと、お笑いもできるアイドルみたいだよね。だから加藤は天才、志村は秀才かな。