演劇研究者である笹山敬輔さんが、ザ・ドリフターズを演劇・舞台の観点から読み解いた著書『ドリフターズとその時代』(文春新書)を上梓した。出版を記念して、本書で紹介されている同氏による仲本工事さんへのインタビューを再公開する。(全2回の2回目/前編を読む)
(初出2018年8月22日。年齢、日付、肩書きなどは掲載当時のまま)
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目って演技には欠かせない要素だと思う
―― カンヌ国際映画祭にも出品された『寝ても覚めても』には東北の漁師役で出演されていますよね。メガネを外されていたので、最初は仲本さんなのか分からなかったんですが。
仲本 わかんなくていいんですよ。僕は何でもいいんです(笑)。
―― ヒロインの唐田えりかさんが「仲本さんの目は、いろんなことを経験した人の目で印象的でした」って仰っていて。
仲本 唐田さんとは二人になるシーンがいくつかあってね。駅の改札のシーンとか、玄関口のシーンとか、僕にとっても唐田さんの目は印象的でしたよ。ああ、こういう人間的な訴えを持った眼差しを、瞬間的に出せる人ってなかなかいないよなって。やっぱり、目って演技には欠かせない要素だと思う。
――「仲本さんの地元感が半端なかった」って、スタッフの方もおっしゃってました。
仲本 あ、そう? 僕は東京生まれだから、東北弁のなまりってすごく難しかった。現地の人に喋ってもらったテープを何回も聞いたりしてセリフの練習しました。でも、現地の人みたいに流暢に喋る必要はないなと思って、わりとゆっくり喋るようにしたんです。その分、間を大事にしたっていうか、それで地元感が出ていたんならよかったかもね。
いかりやさんと僕の、演技についての違い
―― 俳優としての初めてのお仕事って覚えてますか?
仲本 ドラマでは高橋英樹さんの『遠山の金さん』かな。そしたら高橋さんが気に入ってくれて、高橋さんの舞台にも準レギュラーで呼んでもらいました。ほかにも、賞をとった『ウルトラマンをつくった男たち』の仕事も印象に残ってます。三谷幸喜さんの『総理と呼ばないで』では官房副長官の役だったかな、あれは僕にとっては難役だったな。
―― 仲本さんの中では、芝居の演技とコントの演技は繋がっているものですか。
仲本 あまりにもドリフ的なことをやっちゃ流れを壊しちゃうけど、僕なりにドリフ的な部分を1個は残そうと思ってます。真面目に芝居をしてて、いつの間にかドリフっぽい仲本工事になって、また戻るって感じなのかな。
―― いかりやさんも俳優として活躍されましたよね。
仲本 いかりやさんは全く隙のない演技をする人ですね。セリフも完璧に覚えて、前もって演技プランを色々考えてました。舞台を一緒にしたときなんか、楽屋に入るなりお付きの人とセリフの稽古を始めるんですよ。僕は楽屋では何もしないから、いかりやさんに怒られてね(笑)。でも、セリフはその場で考えながら言った方が伝わると思ってるんです、僕はね。本番になったら何も考えないで、舞台でセリフが出てくる瞬間を大事にする。その点だけは、いかりやさんと考えが違ってましたね。