2017年の欧州は、英独仏など中心国で国政選挙が相次ぐ大型選挙イヤーだった。まだ記憶に新しいが、それに先立つ2010年代は嵐の様相。ユーロ危機、ウクライナ危機、難民危機、テロ、そしてブレグジット(英国のEU離脱)など、危機のドラマに満ちていたのである。

 したがって、選挙の結果次第ではEU(欧州連合)が崩壊するのではないかという観測も一部出ていた。しかし、どの国でも反EUを掲げた極右ポピュリスト政党は第一党になれなかった。ドイツでの連立交渉が続いているが、独仏のような中心国で比較的穏当な政権が治世を行うことになり、2018年の欧州は静かな年を迎えるかのように映る。2018年は別の意味でその真価が問われよう。

4期目を迎えるドイツのメルケル首相 ©getty

ドイツが思い浮かべる「財政統合」とは、緊縮財政の共通化

 独仏が相対的に安定したことにより、向こう4~5年にわたって、欧州は改革の季節を迎える。

ADVERTISEMENT

 最重要課題は、ユーロ圏の改革である。2010~12年、15年という最悪の危機を乗り越えるなかで、ドイツ対ギリシャ、メルケル首相対チプラス首相のような対立がメディアを席捲した一方、単一通貨ユーロのガバナンスは強化されてきた。それでも、数十年にわたって持続可能な安定通貨圏として自己確立するまでには、金融・財政リスクを緩和する銀行同盟や財政統合が求められている。

 しかしそれは、国ごとの規律を重視するドイツなどの緊縮財政志向の国からすると、簡単に首肯できるものではない。こうした国は、共通預金保険を導入し、国家財政をEUが直接支援をするなどリスクを欧州で共有化すると、個々の国のレベルでモラルハザードをもたらすことになると危惧するのである。ドイツが思い浮かべる「財政統合」とは、緊縮財政の規律を(他国にも採用させ)共通化することに他ならない。

 けれども、市場統合同様に通貨統合においても、富める国や地域はさらに富むことは必至であり、富のありかは固定化されがちである。したがって、何らかの富の移転がなされなければ、周辺部の経済は回らず、不満は蓄積していくことになる。