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 このシナリオは、ハンガリーやポーランドが権威主義化し、法の支配や表現の自由などについて後退し、難民の受け入れなどEU(中心国)の政策を受け入れない状況で、現実味を帯びる。他方、オーストリアが極右ポピュリズム政党の政権入りを許した結果、排外的な権威主義国の色彩を強めれば、同国がユーロ圏の一部を構成する分、厄介なことにもなりうる。いずれにしても、EUの統合が分断の埋め込みと両立しうることは、頭に入れておいた方が良い。

ブレグジットの交渉が欧州の今後を左右する

 政治的には、いわゆるポピュリズムの脅威はまだ去っていない。3月初旬に予定されているイタリアの総選挙では、五つ星や北部同盟の伸長が見込まれている。独仏のような中心国がもつ破壊力はこの国にはないが、ユーロ圏第3の経済体であり、必要とされるEU改革の足を引っ張る力は十分に残っている。

 他にも、ハンガリーやスウェーデンで総選挙、チェコで大統領選挙が行われる。これらの行方が注目されるのは、上記のように、EU自体が独仏主導のもとで改革途上にあり、それとの関連で、中心国からなる1部リーグ、周辺国からなる2部リーグなどに再編する可能性があるからだ。

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欧州は1部リーグと2部リーグに再編される? ©iStock.com

 加えて、ブレグジット(英国のEU離脱)の交渉が欧州の今後を左右する。このテーマは、大陸諸国から見ると、すでに処理の対象であるが、依然としてイギリスが域内の大国であるがため影響は大きく、両者がいかなる関係を構築するのか、見て行かねばならない。とりわけ、域内市場、関税同盟にイギリスが関わるのか関わらないのか、いかなる自由貿易圏を志向するのか、直接投資をかの国に集中させてきた日本企業にとっては、引き続きウォッチ対象である。

 いま有力なシナリオは、現状をもとにして暫定的な貿易投資関係の新協定をとりあえず来年2019年3月の離脱時までに結び、その後2年の移行期間のあいだに本格的な協定を結ぶ案である。しかし、これも、イギリスの内政、とりわけ保守党少数政権が不安定な分、どうなるか分からない。いまだ際どい局面が続く。

 なお、それとの関連でスコットランドの分離主義が再燃する可能性は否定できない。同様に、スペインの経済的なパワーハウスであるカタルーニャが分離主義の傾向を強めており、不安的要因になりうる。仮にカタルーニャがスペインから離脱するのならば、同時にEUからも離脱することになり、ミニ・ブレグジットのような衝撃となるだろう。

 最後に、2018年3月にはロシアで大統領選挙がある。プーチン大統領の再選が順当とされているが、アメリカがトランプ政権の下で欧州への関心を失うなか、欧州自身がロシアとの関係をどう管理していくのかが、重要となる。欧州は親露派と反露派の間で利害が分かれ、必ずしも一枚岩でないが、独仏などを中心に、選挙後何らかの外交イニシアティヴが見られるかもしれない。日露関係の強化を狙う日本外交にとっても目が離せない。