敵味方双方の大小様々な砲弾が絶えず頭上を飛び交う
途中スラバがウインドーを開け、森に向かって手を挙げ、挨拶しているように見えた。
眼をこらすと、森の中に巧妙に隠された戦車の一部が何両も見えた。どれも森林の西側、ロシア国境側と反対側をバラクーダ(迷彩網)や木の枝で覆い、肉眼ではほとんど判別できなかった。 とりあえず、クルマは最前線にたどり着いたのか素早く深い森の木々の下や塹壕に潜り込んだ。 小隊は車両から機材を降ろすとこれまた森の中に巧妙に掘られた塹壕の中に運び入れた。
「我々の偉大な友人、ミスターイーロン・マスクに感謝する」
小隊長ユルゲンの作戦開始宣言なのか、掛け声とともに、アンテナ群や電源類をこれまた巧妙に擬装(カモフラージュ)しながら、展開し、国境と反対側の森の隙間から直ちに数機のドローンを次々発進させていく。
「テイクオフ!」「テイクオフ!」
コントローラーから流れる英語のアナウンスの直後ドローンは低音の羽音ごとあっという間に上空に消えた。
あとはひたすら衛星経由でドローンが撮影しているのと同じ画像をデータリンクして解析している指令部と連絡とりながら、モニターに目をこらし索敵(敵の捜索)していく。敵車両や人員または疑わしき目標を発見したら、指令部が戦車、砲兵、歩兵部隊等のうち最適な攻撃方法を選択し、射撃していく。
ドローン情報小隊はドローンの位置、画像などから、着弾観測、つまり、「もっと左に、ちょい右に、次は100mまっすぐむこうに」などと指示しながら、射撃効果を判定していく。つまり、目標命中、目標無力化などと判定するのである。
簡単に言えばこうなんだが、当然敵も衛星やドローンを使ってこっちを血まなこになって捜している。敵の妨害電波を察知すると、直ちに森の下の塹壕に身を隠す。その間も敵味方双方の大小様々な砲弾が絶えず頭上を飛び交う。
「ヒュー、ヒュー」という低音の口笛のような砲弾が風を切る音の直後の爆発の衝撃で塹壕の天井から土が崩れ落ちてくる。映画で見たシーンそのままやが、この間が堪らず怖い。1秒でも早く攻撃が終わることを震えながら祈るしかできない。