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日下部被告が語った動機

 これに対し、弁護側は統合失調症による心神喪失状態だったとして無罪を主張した。スーツ姿で現れた日下部本人も「1人でも多く撥ねようとしたのは事実だが、殺意はなかった」と起訴内容を否認。動機については、「無力化された死刑囚の命を奪うことは許されない」と唐突に語った。

「当初は『オウム関連組織や死刑反対関連団体に所属しているのでは』と目されましたが、そうした形跡は確認できなかった。弁護側によると、日下部が中学2年の頃からアルコール依存症の父親に暴力を振るわれたそうです。高校に入学すると、今度は被害妄想が現れ始めた。母親にも『臭いと言われる』『“日下部 臭い”と検索すると自分のことが書いてある』などと相談したものの、そうした事実はなかったようです。その後も妄想に悩まされ、東京の専門学校に入学したものの、数カ月で退学。18年4月に大阪の大学に入り直した頃には、死刑制度を許せなくなったといいます。オウムの死刑執行はその3カ月後でした」(同前)

元日に8人をはねた竹下通りの現場 ©共同通信社

 その一方で、何の落ち度もない被害者らが負った傷は深い。自らも撥ねられた被害者は、他の被害者について「頭から大量に出血していた」などと当時の状況を生々しく語っている。

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 日下部は認否に絡み、「1人目を撥ねたときフロントガラスにへばりついて前がよく見えなかった」などと被害者を人とも思わぬような発言をしていた。