ANYCOLORの事業は実は「堅実」?
VTuberの先駆けといえば2016年に生まれたキズナアイだが、海外展開に際して「分裂騒動」が起き、2022年には活動を休止している。
一方で「にじさんじ」には150名以上のVTuberが所属しており、1キャラクターに多くのものを背負わせるのではなく、複数のキャラクターを個々のファンコミュニティに最適化した形で展開することを意識しているように見える。
「VTuberはYouTuberに比べて炎上しにくい」と言われた時期もあるが、ヘイト発言などによる活動休止も出てきており、多くのVTuberを擁していることはリスクヘッジにもつながっている。
このようにVTuberビジネスは意外にシンプルで、既存の芸能事務所をヴァーチャルに特化・最適化したものと捉えられる。ANYCOLORの事業も、その軸で堅実に展開されているようだ。
2000億円以上の時価総額は「現時点」では過熱状態
その“堅実なファンビジネス”が、フジテレビはさておき、DeNAを上回る時価総額を叩きだしている現状は、やはり期待過剰な部分が大きいだろう。ヴァーチャルというキーワードが、メタバース、NFT、Web3といったバズワード的な期待と繋がってしまっている感がある。
「にじさんじ」とともに2強と言われる「ホロライブ」を抱えるカバーは、今年3月にメタバースプロジェクト「ホロアース」のテストプレイを行い注目を集めた。しかしVRメタバースはVRゴーグルや高性能なPCなどエンドユーザー側に求められる投資が大きく、また運営側にもサーバー維持費など解決すべき課題は多い。
NFTを利用した高額グッズ販売についても、ファンの中心が可処分所得の少ない20代以下であることもあり、安定した収入にはなりづらい。いわゆる“投げ銭”のような少額の課金に頼る状況は当面変わらなそうだ。
適正価格を想像することは難しいが、2000億円以上の時価総額は「現時点」では過熱状態と言える。