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 ただ注目すべきは、ANYCOLORが先日公開した「事業計画及び成長可能性に関する事項」(https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/dju06m/ )のなかで、TAM(Total Addressable Market=実現可能な最大の市場規模)を次のような図で説明していることだろう。

ANYCOLORが公開した「事業計画及び成長可能性に関する事項」より

 この図からは、VTuberビジネスの主力が現在はYouTubeのスーパーチャットによるマネタイズと、テレビを見ない若者への圧倒的な認知度を活かした広告タイアップ展開だが、将来的にはアイドル活動やTVに進出し、メタバース空間へ展開領域を広げていくことを目指していることがわかる。

壱百満天原サロメが「ゲーミングお嬢様」を紹介したら……

 中でも筆者が注目するのは、海外アニメ市場が含まれている点だ。Netflixなどのサブスクリプション型サービスの急速な普及によってこの市場は2019年に1兆円を突破するなど急成長しているが、日本のアニメを好んで観る層が世界的に増えている実感は薄い。

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 Netflixは日本のアニメスタジオに巨額の制作費を提示して「攻殻機動隊」や「終末のワルキューレ」などをオリジナル作品として制作したが、一部を除いて国内外で十分なパフォーマンスを獲得できていない。結果、日本のアニメ産業に到来していたネトフリバブル、アマプラバブルは一段落しつつある。

壱百満天原サロメのYouTubeチャンネル 再生回数がすさまじい

 しかし「にじさんじ」は、その“語り部”の席も狙っていることになる。発信力とコミュニティ運営能力のあるVTuberがアニメの魅力を語ることができれば、日本のアニメ・マンガの文脈は海外により魅力的に、かつ正しく伝わる。壱百満天原サロメが「ゲーミングお嬢様」を紹介したら……と考えれば、その相性の良さといかにもバズりそうな気配を感じることができるだろう。

 あくまでもメタバース市場の確立が前提となるが、VTuberはインフルエンサーとしての力を増すことができるし、アニメ制作者側にとってもその発信力は大いに助けになるだろう。

 これからますますソフトパワーが重要になる日本にとって、VTuberは国益を背負った存在であると言っても過言ではない状況がすぐそこまで来ているのだ。