がんや認知症、LGBTQといった社会課題は、シリアスに扱われることが多いテーマだ。しかし、フリープロデューサーの小国士朗氏は、社会課題に「笑って」向き合える企画を作ることで、社会課題の見せ方や伝え方に革命を起こしている。
ここでは、小国氏の著書『笑える革命 笑えない「社会課題」の見え方が、ぐるりと変わるプロジェクト全解説』(光文社)から一部を抜粋。戦争をテーマにした番組で82歳の語り部がVTuberになった「8・15無念じいといっしょ」、LGBTQについて考える「レインボー風呂ジェクト」のふたつの企画を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
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誰もが乗っかりたくなる「太陽」みたいな企画
太陽的なアプローチ(編集部:誰もが思わず乗っかりたくなるような「太陽」みたいな企画)として、印象的だったプロジェクトがあります。
それは、NHK時代に立ち上げた、「テンゴちゃん」という番組の中でのこと。
「テンゴちゃん」は、月ごとにひとつのテーマを掲げ、世の中に新しい視点でアイデアを提供していく実験型情報バラエティ番組です。
たとえば、消滅危機にある世界の少数言語を、消滅危機にある芸人たちが日本で流行らせることができるのかを実験する「たすけて!消滅危機言語」や、世の中で必要とされていない「いらんもん」をNHKの持つスーパーハイクオリティ8Kカメラで美しく撮ったらどうなるかを試す「いらんもん de 8k」といった企画など……。これまでタブーとされてきたテーマにも切り込み、世の中をちょっとだけおもしろく、ハッピーにするためのアイデアを形にしていく。
アーティストの岡崎体育さんとヤバイTシャツ屋さんをMCに迎え、2018年5月の放送開始から2020年3月の放送終了まで約1年半のあいだ、世の中の辺境にあるさまざまなテーマを取り上げてきました。
「テンゴちゃん」は、従来のテレビ的な手法をはみだした新しいメディアのあり方に挑むプロジェクトで、個人的には、メディアの「北風的なアプローチ」(編集部注:人々の不安や恐怖をあおる企画)をどうにか変えたいと思って立ち上げた番組でした。
この番組で作った企画はどれも「太陽的なアプローチ」なのですが、その中でも僕が特に印象に残っている企画をふたつご紹介します。