コンセプトは「難しい理屈はおいといて、まずはひとっ風呂」
でも、そんな「ど素人」の僕でもつい楽しんで、思わず興味を持ってしまうのが、この「レインボー風呂ジェクト」でした。
このプロジェクトのコンセプトは、「難しい理屈はおいといて、まずはひとっ風呂」。これは、「バリバラ」制作班、久保暢之ディレクター(僕の同期)の発案です。データや知識を頭にインプットすることも大事だけど、何はともあれ、風呂に入ってから考えましょうよという、「バリバラ」らしい強烈なメッセージでした。
企画当日には、思わず笑っちゃうようなことがたくさん起きました。
まずは「見た目の湯」。温泉施設の受付のおばちゃんが、見た目だけで「はい、あんたは男湯、あんたは女湯」と0・5秒で振り分けていくのですが、「性自認は男性、顔も男性、体は女性」のいわゆるトランスジェンダーと呼ばれる方は、しっかりと、何の躊躇もなく、「男湯」に振り分けられました。ここではおばちゃんの指示が絶対ですから、その方と一緒に男湯に入ったのですが、お湯から上がると、おっぱいがぷるんと現れます。
最初は戸惑っていましたが、お湯につかれば、お湯から上の顔はみんな男っぽい。すぐに違和感なく、会話が弾んで、お湯を楽しみました。
次の「戸籍の湯」になると、様子が一変。僕の入った「男湯」には、体は女性だけど、戸籍は男性のままの方が何人もいたため、胸までバスタオルで隠す率が高い高い。目のやり場に困っている方も多く、会話もあまり弾みません。
最後の「自己申告の湯」では、自分自身が一番「しっくりくるお湯」を選んでもらいます。すると、ひとりの男性が女湯に入りたいと言いだしました。彼の話を聞くとみんな納得。
「自分はゲイですけど、男性の裸がないところがいいなあと思って女湯を選びました。男湯にかっこいい男の人がいると、どうしても緊張してしまうんです。好きになるのが男だと気づいたのは小学校の高学年くらいだけど、かっこいい同級生の裸に目がいってしまう自分に嫌悪感を持ったこともあった。だから、温泉を思う存分満喫するには、恋愛対象となる同性がいない方が落ちつくと思って」。
会場からは「行ってこい!」と、拍手拍手。女湯では、女子トーク(今回の参加者で誰がイケてるか)で盛り上がったそうです。
また、自己申告の湯では、男湯にも女湯にも「しっくりこない」という人もいました。Xジェンダーと呼ばれる、自身の性を男性にも女性にも限定していない人たちです。自分の中での性別が定まっていないから、男湯にいても、女湯にいても落ちつかないと。
僕は実際に「レインボー風呂ジェクト」に参加してみて、性の多様さについて、あらためて考えさせられました。
このイベントに参加した人たちはそれぞれに背負っている物語があって、覚悟をもってこの場に来てくれていることを知りました。そんなの当たり前じゃんと言われればその通りなのですが、僕は、一緒にお風呂に入りながらいろいろな話を聞いて、はっと目が覚める思いでした。
【前編を読む】