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LGBTQについて考える「レインボー風呂ジェクト」

 それは、2018年に行った「レインボー風呂ジェクト」という、冒頭の写真でもご紹介した企画。これもまたふざけた名前です(ちなみに、これが僕のNHK最後の仕事となりました)。

 この企画の概要を一言で説明すると、「LGBTQと呼ばれるセクシュアル・マイノリティ(性的少数者)の人たちと一緒に温泉につかりながら、誰もが楽しめる温泉について考えちゃおう」というプロジェクトです。

 レインボー風呂ジェクトでは、「見た目の湯」「戸籍の湯」「自己申告の湯」というテーマに分けられた3つの湯を順番に体験していきます。

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「見た目の湯」では、温泉施設の受付のおばちゃんが、見た目だけで「あなたは女湯、あなたは男湯……」と、入るお風呂を振り分ける。「戸籍の湯」は、文字通り戸籍上の性別に従って決まる。そして最後の「自己申告の湯」は、自分がどちらに入りたいかを選ぶことができる。

 温泉や銭湯というのは、基本的に「男湯」「女湯」という二分法が当たり前。それを逆手にとって、「男湯」と「女湯」のどちらに入るかを決める基準を複数設けることで、僕たちの性が、いかに多様で複雑なのかということを実感できるような仕掛けになっています。

写真はイメージです ©iStock.com

 なかなかにきわどい企画、ですよね。果たして乗ってきてくれる温泉街があるのかと不安でしたが、多様性の街としても有名な大分県別府市が、企画にまさかの即ノリ。市長もノリノリ。「どんな方にも別府のお湯を存分に味わってもらいたい。そのためのきっかけになるのなら!」と言ってくれて、市営温泉を特別に借りきって開催することができました(別府市の前のめり感には本当に感動しました)。

 このプロジェクトの企画発案は、性社会・文化史研究者の三橋順子さんと、NHKの「バリバラ」(24時間テレビの裏で感動ポルノ特集をぶつけてネットをざわつかせたりするアバンギャルド番組)制作班で、僕は全体のプロデュースを務めました。

 参加者は、別府の温泉旅館の女将さんや行政関係者、商店街の店主に大学生、温泉好きの別府市のみなさん、さらにはプロジェクトの趣旨に賛同し、全国から集まった、LGBTQの方々。総勢40人の中に、企画側のくせに好奇心が抑えきれず、僕も加わりました。

 ちなみに告白しておくと、僕はこの企画を実行するまで、LGBTQとは何なのか、よく分かっていませんでした。

 もちろん言葉としては知っています。LGBTQのそれぞれの意味するところ(L=レズビアン、G=ゲイ、B=バイセクシュアル、T=トランスジェンダー、Q=クエスチョニング)も答えられますし、そういった方々が「左利きの人と同じくらいの割合でいる」(諸説あり)ということも聞いたことがあります。情報として、一応頭には入っている。でも、本当に恥ずかしながら、僕の知識はそんなもの。つまり、今回のテーマでもまた、本当のところは何も分かっていない「知ったかぶり」状態でした。