がんや認知症、LGBTQといった社会課題は、シリアスに扱われることが多いテーマだ。しかし、フリープロデューサーの小国士朗氏は、社会課題に「笑って」向き合える企画を作ることで、社会課題の見せ方や伝え方に革命を起こしている。
ここでは、小国氏の著書『笑える革命 笑えない「社会課題」の見え方が、ぐるりと変わるプロジェクト全解説』(光文社)から一部を抜粋。同氏が企画した、認知症状態の高齢者や若年性認知症の方がホールスタッフを務めるイベント型レストラン「注文をまちがえる料理店」の誕生秘話を紹介する。(全2回の1回目/後編に続く)
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「この指とまれ」と言った時、何人がとまってくれるだろう?
子どもの頃、鬼ごっこなんかで遊ぶ時に、「この指とまれ!」って言ったことありますよね。指を掲げた瞬間にわーっとたくさんの友達が自分の指にとまってくれた時の、あの感覚。ものすごくうれしかったなぁ(もう30年以上前なんだなぁ)。
僕は企画を考える時、いつもあの時の風景を思いだすんです。
僕にとって企画はどこか遊びにも似たところがあって、せっかくやるなら、できるだけ多くの人と一緒に楽しく作っていきたいと思っています。
でも、どうやったら「おもしろいね!」「一緒にやりたい!」と言ってくれる賛同者や協力者を増やすことができるのか。
幼く、無垢で、かわいかった(って親が言っていました)あの日から30有余年。僕がたどりついた答えは、「この指とまれの、指を磨くことが大切」ということでした。「指」とは、つまりコンセプトのこと。コンセプトひとつで、共感する人や参加してくれる人の数は大きく変わります。
「指」=コンセプトを磨いていくことの大切さを明確に感じるようになったのは、2017年、「注文をまちがえる料理店」という企画を作った時のことでした。