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 さっそくメンバーが長崎へ飛び、森口さんに「若い人たちに原爆や戦争のことを伝えたいんですよね。若い人たちに伝わらない無念さを、私たちと一緒に晴らしませんか?えっと、えっと……。森口さん、VTuberになってみませんかっ!?」

 こんなムチャぶりをしたところ、さすがは森口さん、快諾をしてくださいました。こうして、終戦の日の8月15日の夜に、VTuberに扮した森口さんが戦争や原爆について語る番組「8・15無念じいといっしょ」が誕生したのです。

 これまで毎年8月15日のNHKといえば、「NHKスペシャル」をはじめとする、時間をかけた丁寧な取材と、それによって掘り起こされた事実に基づく、重厚で見ごたえのある番組を流すことが鉄板でした。でも、やっぱりなかなか若い人には見てもらえない。

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 若い人に大切な情報を届けたいという思いは、森口さんだけではなく、僕たちにとっても切実な問題でした。なんとしても情報を届けきりたい。VTuberという表現自体は軽やかで楽しいものですが、その裏側では、森口さんとNHKの一致する強い思いがありました。

 戦争をテーマにする番組で、おじいさんがVTuberになるなんてことは、NHKとしてはまさに前代未聞。表現の限界を攻める、ぎりぎりの挑戦でした。

「#82歳Vチューバーだけど質問ある?」

 放送当日。終戦の日の最後を飾る番組が、「テンゴちゃん」でした。

「#82歳Vチューバーだけど質問ある?」というハッシュタグを作ってTwitterで質問を募集してみたところ、1時間の生放送のあいだに、なんと1万5000通のお便りが森口さんに届きました。

「戦争を知らない若者が多いこと、どう思う?」「一番ショックだった出来事はなんですか?」「戦争中に心の支えになっていたことはなんですか?」「戦争ゲームについて、森口さんはどう思いますか?」「当時の楽しみは何がありましたか?」

 質問は、とまることなくどんどん届きます。

 これは、革命的なコミュニケーションでした。

 今までNHKがリーチしたくてもできなかった10代・20代の若者たちが、番組を見てくれている。そしてものすごく軽やかに、森口さんとコミュニケーションを取っている。

 声も森口さんだし、話している内容も今までとなんら変わらないのですが、顔や伝える媒体が少し変わっただけで、急に子どもたちが親しみを感じて積極的にコミュニケーションを取り始めたのです。当たり前ですけど、「くたばれ、死に損ない」なんて言う人は誰ひとりとしていません。

 VTuberという「太陽的」な表現によって、多くの若者が思わず乗っかりたくなる企画が生まれた瞬間でした。

 もうひとつ、「テンゴちゃん」の中から印象的な企画をご紹介したいと思います。