優勝の分水嶺となった真のキーマンはいったい誰か──
なんだかすっかり遠い昔のような気がしなくもないですが、ロッテとオリックスと言えば、昨季の最終盤まで熾烈な優勝争いを演じた因縁の相手。オリックスが先に全日程終了で「隠れマジック1」。こちらが負けた時点で即終了の「マジック3」で迎えた敵地・楽天戦での佐々木千隼の涙には、多くのマリーンズファンが思わずもらい泣きをしたことでしょう。
そもそも、コロナ禍突入までの直近3年間(2017~19)。観客動員数のワースト争いでデッドヒートを繰り広げていたのも、他ならぬこの2球団。「不人気」だの、「地味」だのと、好き放題に言われながらも、「うるせー、好きに理由なんてあるか!」と心のなかで言い返すしかなかった、どこか“似た者同士”な両者のペナント争いは、なんかもうそれだけで胸アツだったりもしたものです。
とはいえ、すんでのところで頂点をつかみそこねた悔しさは、やっぱり筆舌に尽くしがたい。
なんせこちとら、1位通過でのリーグ優勝は70年シーズン以来、一度もない身の上。同年が、ぼくらの“おじいちゃん”有藤通世のプロ2年目だったことを思えば、イチローの5年目だったオリックスの「四半世紀ぶり」など、ついこのあいだの話。表向きには「大事な局面であっさり負けるあたりが、なんともロッテらしいよね」などと得意の“自虐”をかましつつ、本音では、そこらじゅうに穴を掘って「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」と叫びたかったのは言うまでもありません。
もちろん敗因については「コレ!」と絞れるほど単純なものでもないでしょうが、一昨年に18勝5敗1分となかば“カモ”にしていた対戦成績を一気に五分まで戻されたこと。とりわけ、“ラオウ”こと杉本裕太郎にやたらめったら打ちまくられたことは、大きなポイントのひとつ。
なにしろ、マーティン&レアードの助っ人勢を除けば、マリーンズのシーズン本塁打は荻野貴司の10本が最多でしたから、対マリーンズ戦で13本もの本塁打を量産した彼は、正真正銘の「ロッテの試合でいちばん本塁打を打った日本人選手」。打率.430、23打点、OPSに至っては驚異の1.409と、逆に彼ひとりに“カモ”にされていたわけですから、これでは勝てるものも勝てません。
いくらこちらのベンチに、井口資仁監督をはじめとした母校・青学大の諸先輩方が多数控えているからって、そんなにいいとこ見せなくたっていいのにさ……。ホント、いま書きながら思い返していても、吉田正尚との“青学コンビ”だけは、もはやトラウマものだったよなぁ(遠い目)。
ただ、主軸たる彼らが活躍することは、言わば“想定の範囲内”。チーム本塁打だって、オリックスの133本に対して、ロッテも負けじと126本ですから、そこまで決定的な差ではありません。
だとすれば、優勝の分水嶺となった真のキーマンはいったい誰か──。
ほら、いたじゃないですか。ある意味、ラオウ以上の存在感を発揮していたイキのよすぎる、うるさいやつ。観客制限のかかったコロナ禍の静かな球場で、中継音声にも拾われまくるほどひと際通るダミ声をベンチから張り上げていた“声出し番長”のあいつです。
そう。オリックスにはあって、ロッテになかったもの。それはたぶん、ラオウ的な和製大砲よりもなによりも、大下誠一郎的なギラつきと声量だったように、個人的には思うのです。