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“魔の8回”問題をどうするか…今村猛が期待する広島・中﨑翔太の完全復活

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/07/14

“魔の8回”――

 今シーズンのカープを象徴するような言葉として、ネット上で多く見かけます。抑えの栗林良吏選手に繋ぐ投手がなかなか決まらず、13日現在で8回のイニング失点数は54と最多……。一時に比べて落ち着いてはきましたが、かなり苦しんでいます。

 カープの中継ぎ陣を見てみると、球自体の質は良いものを持っている選手が多いですが、やはり全体的にコントロールに不安があるのかなと。逆に言えば、そこさえレベルが上がれば誰でも8回を投げられると思っています。

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 僕も元々コントロールが良いかと聞かれるとわからないですが、自己満足で投げるのではなく、打者をいかに抑えるかを考えるのが大事な気がします。みんなコンディションが毎回良いわけではありません。だからこそ、そうじゃないときに「自分がこう投げたい」だけでボール、ボールになるよりも、どうやって自分のプレーを日によって変えられるか。もちろんストライクを狙ってボールになっていることもあると思いますが、投げたいままで四球を出すより、もっと工夫だとか、ちゃんと野球をやろうという姿勢があればいいのかなと。そこができたらもっと簡単にいく気がしています。

 そういったところで、やはり期待したいのは中﨑翔太選手です。

2016年のCSにて 左から中崎翔太、野村祐輔、筆者・今村猛

最初は弟みたいな存在だったが…

 中﨑選手は僕の1学年下で、鹿児島生まれの同じ九州出身というのもあり、個人的には親近感があって、入団時は嬉しかったのを覚えています。ただ、1年目の中﨑選手は強化指定選手だったので、シーズン中はほとんど絡みがありませんでした。

 いろいろ喋るようになったきっかけは、翌13年の1月に宮崎県・日南市で行った先乗り自主トレでした。野手陣は東出輝裕さん(現野手総合コーチ)など何人もいたんですが、投手は自分と中﨑選手の2人だけ。ずっと一緒に練習していたので、自然と仲良くなりました。

 最初は弟みたいな存在だったのですが、お互いに一軍でプレーしていく中で、自分がセットアッパー、彼が抑えというポジションになり、段々ともう1個下とか年齢も関係なく対等な立場というか、良き友人のような存在になっていました。

 そして、たまたま家も近所というのもあって、移動の新幹線とかも時間を合わせていましたし、優勝旅行の番組ロケなど、たくさんのイベントを一緒に過ごしていました。

 彼は今もそうだと思うんですけど、野球のネットニュースなんかをたくさん読んでいて、自分がわりとそういったことに無頓着だったので、移動中などは他球団の選手の記録とか、成績だとかを「これ知ってますか?」と、よく教えてもらっていたのを覚えています。

「変わったな」と思った瞬間

 中﨑選手の変化を感じたのは14年でした。自分が二軍にいた間に、彼は抑えになっていて、一軍に戻った時に「雰囲気が変わったな」と。チームの中心に近いところにいて、どんどん野球が上手くなっていました。

 同時にメンタル的な部分も変化があったと思います。マウンドにいるときの表情とそれ以外のときの表情の違いは、ファンのみんなも感じていたことでしょう。「なんか引き締まってるな」と。ヒゲとかもそうですよね。気持ちを入れるというか、雰囲気作りを彼なりにやっていたんだと思います。

 ずっと試合をやっている中で、毎回気合いを入れて投げるのは当然ですが、どうしても気合いが入らないときもあるんです。たとえば急に投げないといけないときなんかは、体も心も準備ができていない状態。でも逆に準備をしていない分、どうにでもなれという気持ちになれて、成功することもあります。

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