もちろん、正義感や優しさ、正しさに満ちた正統派の役もやっとる。『最上の命医』(2011年・テレ東)では清く正しい(しかも自身も病に侵される)天才小児外科医役だったし、『アキラとあきら』(2017年・WOWOW)では、貧乏で辛酸なめたほうのあきら役。父の営む零細工場が銀行の融資を断られ、閉鎖&一家離散の辛苦を背負うが、銀行員となって苦しむ人の救済に奔走する役。善行を積む工。
清く正しく貧しくの路線で言えば、シモネタ時代劇映画『のみとり侍』(2018年)にも出演。のみとりとは要するに女性相手に春を売る男のこと。てっきり工ものみとりと思いきや。劇中でも「のみとりに向いているんだけどねえ」と風間杜夫に言われるのだが、貧乏長屋に暮らす浪人役だった。子供たちに勉強を教えるが、残飯を野良猫と争って破傷風になるっつう、清貧&うっかり浪人なのだ。
漏れ出る「マイナー志向」
そして異変が起き始める。もともとメジャー志向ではないことはうすうすわかっていた。工はWOWOWで板谷由夏と映画番組『映画工房』を長年やっているが、映画の趣味がマニアックで、感性の在りかが難しいというか目線が違うというか。
決定的だったのは、野性爆弾のくっきーと組んだドキュメンタリー風ドラマ『MASKMEN』(2018年・テレ東)だ。工はなぜか覆面芸人「人印(ピットイン)」になる。くっきーはじめ、お笑いの人々から手厳しいダメ出しを喰らう様子が描かれた(ネタがほとんどシモネタだった)。
世間が求める容姿端麗な欲情装置にうんざりし、イメージをぶっ壊したいのだなとも思わせた。ただし、ちょうど同時期に放送した『BG』(テレ朝)ではいわゆる正統派な役もやっていたので、完全なる逃避ではなく、バランスをとっていたように思う。