成人して10年が経ち、もう30歳になったが、特にこの数年間は、本人ですら思いもしなかったような子どもの頃の記憶で、ひたすらに苦しんでいる。
「家庭内の性暴力」と聞くと、多くの場合に思い浮かべるのは強制性交や、手や口による陰部などへの接触だが、実際にはそれだけではない。あまり深刻に問題視されていないが、「からかい」目的で、不必要に子ども(それが幼児であっても)の胸や尻を触る行為も、立派な性暴力である。もちろん、子どもを入浴させたりオムツを替えたり、排泄物を拭いたりする際に必要な接触であれば問題はないが、そうではない場合は注意が必要になる。
大人は「からかっているだけ」でも
私が育った家庭は「機能不全家族」と呼ばれるもので、家庭内に暴力があり、夫婦仲も良いとは言えず、経済的にも困窮していて、とにかく会話がなかった。家族で食事を摂る習慣もないので、子どもの頃から食事は自分の分を部屋に運び、食器を床に置いて食べるのが習慣だった。
特に父親は家庭にまったく関心がなく、家にいる間も誰かと会話をすることはなかった。私と兄は同じ家に暮らす父親に人見知りをしている始末で、父親がいる空間はとてつもなく気まずいので、どのように振る舞うのが正解かがわからずに互いに避けて生活をしていた。
しかし、まだ物心がつく前の幼少期を思い返せば、父親とまったく接触がないわけではなかった。父親はたまに気が向けば、私の尻や胸を触ったり掴んだりして、私が嫌がる様子を見て笑っていた。兄もそれを真似して、同じことを私にやった。もちろん、その行為は性的な満足感を得る目的ではなかったと思う。父親自体も機能不全家族出身であるので、おそらく子どもとどう接していいのかわからず、彼は彼なりに子どもに構ってあげようとしていたのだと思う。
しかし、私とひとつ違いの兄にはそんなことを一切しなかったのに、女だからという理由だけで、私だけがそうした「からかい」を受けていたのだ。「やめて」と言ってもやめてくれず、かえって面白がる父親や兄を見て、私は心の底から怒りを感じ、まだ言語化できない気持ちの悪さを抱えて、泣きわめくほど悔しくても耐えるしかなかったのを覚えている。