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「忍者」菊池のポジショニング

 本来なら難しい飛球を、簡単に捕る。安打を1つもぎ捕ることは、安打を1つ打ったのと同等の価値がある。「ポジショニング」の成功は、見えないファインプレーである。 

 外野手ではないが、たとえば13年から9年連続して二塁手ゴールデングラブ賞の菊池涼介選手(広島)。

 マスコミはアクロバティックに打球を捕るところだけを切り取ってクローズアップし、「忍者のように捕る」と表現するが、彼の一番のすごさはポジショニング。ただ追いついているだけでなく、最初からとんでもないところで守っていたりするし、動き出しが実に早い。だから、並みの選手がダイビングキャッチを試みたところで絶対に届かないような場所でも捕ることができる。

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 データで見ても、菊池選手の補殺数は頭ひとつ抜けている。(編集部注=投げて走者をアウトにする「補殺」。セ・リーグ最多補殺=14年広島・菊池の144試合535補殺。パ・リーグ最多補殺=18年ロッテ・中村奨吾の143試合486補殺。参考=6年連続ゴールデングラブ中日・荒木の最多は05年145試合496補殺。菊池は他2人と比較してシーズン40~50個ほど多い)

現役時代で一番上手いと感じたのは福留孝介

 注意して見ていると、菊池選手のような準備や動き、すなわち「ポジショニング」をしている内野手は存在するが、外野手には少ない。

 僕が現役時代にプレーしている中で、一番上手いと思っていたのが福留孝介選手だ。 

福留孝介 ©文藝春秋

 ショートでプロ入りして、完全に外野手に転向した02年、打っては首位打者、守ってはいきなりゴールデングラブ賞を受賞した。

 チャージ力があって、モーションも小さく、強肩で送球も安定。すべてがそろっているといっていい。

 足はそんなに速くないのに、守備範囲が広いというのは、すなわちポジショニングが優れているという証明だ。

 僕が左打席で構えたときに、視界に入っていなかったはずのライト・福留が、いつの間にか視界に入ってくる。ポジショニングだ。

 井端弘和さんや宮本慎也さん(ヤクルト)など、ショートを守る内野手にそういう人はいたが、外野手では稀有の存在だった。

「脚力があるのだからポジショニングをしっかりやれば、捕れそうもない打球に追いついて、良い外野手になれる」

 僕はいま野球解説者として、そういったポテンシャルのある外野手を注視して探している。

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