『機動戦士ガンダム』と『ウルトラマン』。昭和の成長期に誕生し、今なおアニメと特撮の大看板を張るシリーズの最新作が、令和4年の初夏に劇場公開された。それぞれの監督を手がけた安彦良和氏と樋口真嗣氏が、自身の作品に込めた思いのたけを語る!
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樋口 今日は、いちガンダムファンとして、いろいろ話をお聞きしようと純粋な気持ちでやってきました!
安彦 ぼくは「打倒『シン・ウルトラマン』」という不純な気持ちだったんだけどなあ(笑)。
樋口 この対談の前提として、最初に説明しないといけないのは、TV版『ガンダム』のすごさ。当時のアニメは、各話で絵が似てないのは当たり前だったんです。ところが『ガンダム』は作画監督の安彦さんが、メチャクチャ修正を入れて作画レベルを安定させていたんですが、当時のTV版「ククルス・ドアンの島」には安彦さんがタッチしていないんです。
安彦 (笑)。
樋口 映画『ククルス・ドアンの島』は、当時の無念の気持ちが、43年の時を経てやっと正しい形になったと感じました。まずドアンが面倒を見ている子どもたちの人数が、TV版より多い。それで『ろぼっ子ビートン』や『わんぱく大昔クムクム』の時代と同じように、弾む感じの絵で描かれた子どもの群像劇になっている。
なかでもよいなと思うのが、カツ、レツ、キッカの3人がホワイトベースで戦いを潜り抜けてきて、すでに大人のたくましさを持っている。これが後のエピソードの「小さな防衛線」につながっていくのかと。あの当時できなかったことを、ぶち込めている感じがしてすばらしかったなと思いました。