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《特別支援学級って最先端》「“偏見”が教員の中にも根強くある」狛江のあおば学級はなぜ“面倒くさい”を乗り越えられたのか

《特別支援学級って最先端》「“偏見”が教員の中にも根強くある」狛江のあおば学級はなぜ“面倒くさい”を乗り越えられたのか

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――学校のカラーは、校長先生の方針によるところも大きいんですか?

森村先生 そう思います。荒川校長とあおば学級の話をしていると「子供にとっていいと思うことはなんでもやりなさい」と言われます。私が新しい方法に悩んで相談にいっても、返ってくるのはだいたい「もっとのんびりやればいい、どんどんやんなさい」という返事(笑)。「やってごらん」と言ってもらえるのって、子供だけじゃなくて大人にとっても大事なんだなと痛感しています。

荒川校長 結局、子供のためになることを一生懸命考えてやっているのは現場の教師なんだと思うんですよね。もちろん止めることもありますが、まずはできるだけ現場を信じてみるようにしています。

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森村美和子指導教諭 ©︎文藝春秋

「特別支援学級を“特別扱い”しすぎない」

――狛江第三小学校は通常学級と特別支援学級の関係が近いと聞きますが、それも独自のスタイルですか?

荒川校長 特別支援学級を“特別扱い”しすぎないというのは常に意識しています。

森村先生 集団が苦手なあおば学級の子たちでも、リモート授業なら通常学級の授業を一緒に受けられる可能性があるというのは発見でした。自分の気持ちが不安定になったら画面をOFFにすることもできます。集団が苦手で疲れやすさなどがあっても、方法さえあれば集団に入れる場面はある。リモートで参加できるようになることで、可能性が広がりました。

――学校行事などはどうしているんでしょう。

荒川元邦校長 ©︎文藝春秋

森村先生 学芸会も運動会も、なんとか一緒に参加する方法を模索しています。表に出るのが苦手な子も多いので学芸会には参加していなかったんですが、動画なら作れることに気がついて、あおば学級のムービーを作りました。子供たちが出演してあおば学級の教室や活動について紹介する内容で、学芸会で放映したところとても好評でした。

 運動会でも、あおば学級の全生徒が一斉に走るレースを行いました。特別支援学級は運動会のような行事がないことも多いので、子供たちも保護者の方も本当に喜んでくれました。

教室の隣には休憩や遊ぶことができるプレイルームが併設されている

あおば学級から通常学級の子供へのメッセージ

――通常学級の先生たちや保護者の方々にもあおば学級は支えられているんですね。

森村先生 そうなんです。通常学級の子に「“あおば学級”はどうしてあるの?」と聞かれたのをきっかけに3分くらいのCM動画を作ったこともあります。内容は学芸会の時に近いあおば学級の紹介ですが、通常学級の子供へのメッセージも入っています。「一人で追い詰めないで。同じ仲間がたくさんいるよ。人によって落ち着く方法は違う。自分を知ること」「あまり無理しないでね。辛かったら休憩も大事。好きなことに集中してみよう。自分に合った選び方がきっと見つかるよ」という内容で、子供たち自身が台本を書いて、撮影から編集までやりました。

 荒川校長が背中を押してくれるので、通常学級の先生たちが参加できる授業参観を開いたこともあります。