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《特別支援学級って最先端》「“偏見”が教員の中にも根強くある」狛江のあおば学級はなぜ“面倒くさい”を乗り越えられたのか

《特別支援学級って最先端》「“偏見”が教員の中にも根強くある」狛江のあおば学級はなぜ“面倒くさい”を乗り越えられたのか

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《特別支援学級って実は最先端の教育をしている》こんな発言が先日、SNSで話題になった。

「特別支援学級」とは、知的障害や肢体不自由、病弱、弱視、難聴言語、自閉症・情緒障害等のある児童を対象とした少人数の学級で、国内の公立小中学校だけで約30万人の児童が在籍している。このうち約15万人が、自閉症や情緒障害を持つ子どもたちだ。

「障害を持った子供のケアに手一杯で、先進的な取り組みなんて難しいんじゃないの?」と思われがちだが、「特別支援学級」は一人ひとりに合わせて指導方針を立てるため、実は新しい教育方法も取り入れやすいという。

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狛江私立狛江第三小学校 ©文藝春秋

 2018年に東京都・狛江市立狛江第三小学校に設置された「あおば学級」も、そんな先進的な教育法を取り入れている特別支援学級の1つだ。正式名称は自閉症・情緒障害特別支援学級といい、自閉症やそれに類するものや心理的な要因による選択制かん黙の児童を対象としている。あおば学級ではタブレット端末を活用して企業や大学と連携したり、ロボットのプログラミング学習を実施したりもしている。なぜ一般的な小学校でも難しいことが、特別支援学級では可能なのだろうか。

 狛江第三小学校校長の荒川元邦さんと指導教諭の森村美和子さんに、あおば学級が先進的である理由について話を聞いた。(全2回の2回目。前編を読む)

荒川元邦校長と、あおば学級を担当する森村美和子指導教諭

◆ ◆ ◆

「学校というのは保守的な世界なので…」

――あおば学級の授業では従来の学校教育の中ではあまり聞かなかったような内容のものも多いのですが、それらは全て学校の先生が担当されているんですか?

森村先生 教員だけでは限界があるので、講師の方を外部からお呼びすることも多いです。2020年7月には、東京藝術大学さんや香料会社さんと連携して“香りの開発”というプログラムを実施しました。あおば学級には感覚過敏の子もいて、ほとんどの人が気づけないような小さなにおいが気になって教室に入れなかったり、人混みに入れなかったりすることがあります。でも東京藝大の先生が「においに敏感ということは香りの感覚がすごく豊かだから、香りの開発には欠かせない力だよ」と話してくれて、子供たちと一緒に新しい香りを開発したんです。開発した香りは藝大主催の展覧会に出展しました。

東大の先生を講師として招きいて行った「自立活動」の掲示 ©文藝春秋

――そういった外部との連携は、他の学校でも一般的なんでしょうか。

荒川校長 あまり広がっているとは言い難い状況だと思います。ロボットのプログラミング授業で提携したNPO法人(WRO Japan)の方も、多くの特別支援学級に声をかけたけれど反応が返ってきたのはうちの学校だけだったと言っていました。

――なぜあまり広がらないんでしょう?

荒川校長 学校というのは保守的な世界なので、新しいことをやろうとするとハードルが高いのは事実です。あとはやはり「面倒くさい」というのは大きな理由だと思います。労働時間に余裕があるとも言いづらい状況ですし。私としてはせっかく新しい教育方法が開発されているなら、どんどん取り入れられるようになればいいと思っているんですけどね。