昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2022/07/11

 もちろん、岸田政権支持率が50%を超えている限り、今回投票に行かなかった人をいくら掘り起こしても自民党がより有利になるだけで差が開く可能性もあります。ただ、実際には今回支持政党のない人たちがおおむね17%から22%しか投票所に足を運んでおらず、どこの選挙区においてもこれらの支持政党のない人たちが共産党、立憲民主党に投票する傾向は高かったことを考えると、野党側はこういう「現政権に満足をしていない人たちをうまく投票所に向かわせるムーブメント」を作る必要があるのではないかとも思います。

 目を転じれば、そのバックグラウンドの良しあしはともかく参政党がネット経由で支持層の掘り起こしに成功して、各都道府県に擁立した泡沫候補でも2%を超える得票を確保したばかりか、比例でも1議席を確保して既存政党である社民党ともタメを張るぐらいの健闘をしました。同じく、ネットで暴露番組を繰り返して知名度を得たガーシーこと東谷義和さんが出口調査でも一目でわかる人気を博し、ほぼひとりでNHK党を背負う形で議席獲得に至ったことを考えれば、野党勢力もまた、ネット時代の新たな票田の掘り起こしや、潜在的な支持層の拡大の手法として参考にするべき部分はあるのではないかと思います。

©iStock.com

民主主義である限り、野党がまともであってほしい

 光明で言うならば、まさに参院東京選挙区で事前に苦戦が予想された共産党・山添拓さんが、比較的左派系住民の多い新宿区、文京区、杉並区を中心に無党派層の票をもっとも獲得していたことが特筆に値します。

 中道右派の私から見ても、割と攻撃的な街宣を繰り返す共産党候補者の中では特に山添拓さんの論戦はクリーンで分かりやすく、また、人柄のよさそうな語り口を感じさせ、長年共産党を牽引してきた志位和夫さんの、ようやくちゃんとした後継者が出てきたのではないかとさえ思うような人材に成長しつつあります。他方で、共産党は比例代表では野党きっての経済通・大門実紀史さんを落選させてしまい、国会での与野党の経済論戦を担う重要な片翼を失ってしまいました。

 立憲民主党は、新代表・泉健太さんの初陣として「生活安全保障」をスローガンに掲げて選挙戦に挑みましたが、率直に言うと「何をテーマにしているのか分からない」ことから、普段あまり政治に関心を持たない無党派層の掘り起こしに足る理解しやすさを欠いて、その人の知名度や議員・候補者としての評価でバラバラに戦ったようにさえ感じます。

 民主主義である限り、やはり野党がまともであってほしいという気持ちは強いです。とりわけ物価高、賃上げ、円安、エネルギー不安といった、生活に密着した分野での政策主張を繰り返しているものの、よりほんわかして分かりにくいと評判が芳しくない看板政策「新しい資本主義」という岸田政権への経済政策パッケージに対してすら、投票所に行った有権者に批判が届かなかったのはもったいないなあと思います。

 野党共闘が成功するかどうかは、政権に批判的な無党派層が投票所に足を運んでくれることを大前提にしています。そのうえでさらに、政権批判票がおおむね左派政党の票になってくれないとあまり効果がありません。その中で、自民党よりも「右」にある維新が新たな選択肢として登場したからには、無党派層を獲得するための野党共闘だけでは駄目で、政党に対してファンになってくれるような政治活動を積み重ねていく以外ないのかもしれません。

 野党共闘は党勢が衰えている立憲民主党と共産党が過去の経緯を脇において、まずは候補者擁立で調整するという点では利点ですが、もともとの立憲民主党、共産党おのおののコアの支持層が増えない限り、いつまでも現状批判の無党派層頼みになってしまいます。そこへ維新への支持の拡大や参政党、NHK党、れいわ新選組などが登場して、選択肢が増えてしまうと効果を発揮しません。

 野党共闘も大事ですが、立憲民主党や共産党に対する有権者のしっかりとした期待と、それを支えるInstagramやTwitter、YouTube、TikTokなどへのリーチがない限り、彼らが欲する10代20代の支持は広がらず、高齢者の政党になってしまうことでしょう。

z