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(3)スキャンダルと経済政策が岸田政権の命運を決めるか

 出口調査において、国民の関心事はまず「経済」が、次いで「年金・社会保障」「安全保障」の順となり、感染者が増えてきた「コロナ対策」と「エネルギー・環境」「憲法改正」が続いています。これらの問題は選挙調査の名目上分けて項目立てをしていますが、じっと見ていただければご理解いただけるように、例えば一口に「経済」といっても景気・雇用だけでなく物価高や賃金などの問題も含みますし、また、エネルギーや環境もまた、ほぼ直接経済問題と地続きになっています。

 国民からすれば、物価高だし賃金も上がらないところで生活が苦しい、また、年金の切り下げもあって物価が上がれば大変なところ、目の前にある生活苦が争点であるはずが、岸田首相の政権運営を7割強の有権者が支持していることを見ると、「投票所まで行った限られた人」が自民党・公明党を大勝させたと言っても過言ではありません。

 おおよその傾向として、今回の参院選で自民党が大勝したといっても、52%の投票率のうち自民党に投票したのは3分の1の34%あまりにすぎず、実際には有権者の2割に満たない18%ほどの有権者の投票行動によって「自民党は勝ち、岸田政権は信任された」ことになります。確かに1人1票では何も変わらない面はあるでしょうが、政治に期待し、変革を求める国民の動きとして5人に1人が投票所に行くようになるだけで自民党の勝ちはひっくり返るのです。

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 逆に言えば、仮にコロナ感染者が増えて、いっそうの物価高で計画停電もあるかもしれない1か月後の8月に参院選があったならば、岸田政権への大きな批判の声とともに野党圧勝になった可能性さえもあります。その意味では、岸田政権は真の意味で「ツキがあった」ように見えます。

 また、政権運営に行き詰まるようなスキャンダルが出ると、前述の憲法改正や、経済対策での大規模な補正予算を組むような袋小路に入りやすくなります。安倍政権の最大の危機は自らの政治生命を賭けて実現しようとした安保法制の実現だったことを考えれば、スキャンダルを抱えてなお重要な政治課題に取り組むことができるのかが岸田政権の真価となるでしょう。

 そのぐらい、いま国民の間で経済問題が争点となっており、現実的で、実現可能性のある経済政策が求められているのだとも言えます。

重要な局面で舵取りを任されることになった岸田政権

 その点で、その結果についてはおおいに議論はありながらも故・安倍晋三さんの手がけた「アベノミクス」は長らく低迷していた日本経済を曲がりなりにもどうにかし、00年代まで主たる政治課題の一つであった有効求人倍率と失業率を改善させ、実のところ、曲がりなりにも異次元の金融緩和で円高を是正し雇用を創出したことで、アベノミクスは広がりつつあった経済格差を是正しました。格差の度合いを示すジニ係数(再分配所得ベース)が上げどまったことで、旧民主党政権以降、安倍晋三さんには若い支持者が多かったのも、選びすぎなければ働く先はある日本経済に仕上げてくれたからに他なりません。

 岸田政権が向かう先は、国内経済が盛り上がらないところで、どう国際的競争力を維持し、日本の稼ぐ力を維持しながら増え続ける高齢者が必要とする年金・社会保障を切り詰めるかです。政策面ではけっこう曲芸のようなことをやらないと、本気で「岸田政権の3年間で日本の衰退か繫栄かが決まる」と言われかねないぐらい、重要な局面で舵取りをやり遂げなければならないのです。

 政権の使命は憲法改正も含まれるかもしれないですが、防衛費の増額やコロナ対策、エネルギー調達といった目前の難題に加えて、経済政策で一つ間違えると奈落であり、そんな衰退日本の墓標として「安倍晋三さんが日本の安全神話を崩す暗殺をされたことで、日本の転落が決定づけられた」とでも後から言われないように、どうにか頑張ってほしいと願うところです。これからの時代を担うすべての日本人のためにも、岸田政権の今後をきちんと見ていきたいと思います。