山上容疑者が供述の中で述べたとされる「母親の経済的破綻」についても追及があった。
田中会長は「破綻」の事実を認めたものの、「破綻した諸事情は把握していない。現場に問い合わせても当時のことを分かっている者もいない」とした。一方で、山上容疑者の母親の入会時期を「1998年頃」とし、「2002年頃」までに破綻に至ったとの認識を示した。
また、2009年頃から約8年ほど教団から離れた時期もあったとし、2020年前後に再び教団信者らと連絡を取るようになったとも述べた。
安倍家と教団との関わりについて「深く関わってはいない」
11日までには山上容疑者が、安倍氏の祖父・岸信介元首相についても「家庭を壊した団体を日本に招いた」として敵視する新たな供述をしていることが明らかになっている。岸氏は、旧統一教会の創始者である文鮮明氏と交流し、親密な関係を築いていたとされる。教団側が発行する機関紙誌に、文氏が主催するシンポジウムに弁士として出席した際の写真が掲載されたこともある。
岸氏は、教祖の文鮮明氏が1968年に立ち上げた政治団体「国際勝共連合」の日本での普及にも協力したとされ、祖父と孫、世代をまたいだ教団とのつながりに反発を強めた可能性がある。
田中会長は、こうした「安倍家」と教団との関わりについても説明した。
岸氏との関わりについては、「いわゆる私たち法人との関係というよりは、創設者、文鮮明氏の平和運動に広く理解していただいたと認識している」と答えた。その上で、「(教団とは)深く関わってはいない。ただ平和運動で関わっていることはあるかもしれない。その辺は友好団体(UPF)と確認したい」とした。
「お金の動きは一切ない」
安倍氏との関係は「友好団体(UPF)が主催する行事に安倍元首相がメッセージを贈られたことはある」と明かした。
文鮮明氏の妻で現在の教団トップ、韓鶴子氏が主導するという「世界平和運動に関しては賛意を表明してくださっていた」とした上で「会員として登録されたことも顧問になったこともない」と強調した。
自民党や党の所属議員への献金などについては、「お金の動きは一切ない」とした。
約1時間にわたる会見に同席した澤田総務局長からの発言はなく、田中会長がほぼ1人で報道陣とのやり取りを続けた。
会見の最終盤で田中会長は、犯行の背景に教団への恨みなどがあったとされた場合の責任について問われ、「動機の根源にあるとなれば、とても重く受け止めなければいけない」と静かに語った。
平成、令和で一時代を築いた大宰相の命を奪った暗殺者の心の闇の解明はこれからだ。