中堅生命保険会社・FWD生命とその販売代理店が、多数の被保険者の同意を得ないまま勝手に印鑑を押してがん保険を契約させていたことが「週刊文春」の取材でわかった。同社の現役社員が明らかにした。保険業法違反の疑いがある。
FWD生命は全国に13の支社を持ち、従業員数は860名(2021年3月)。2021年3月期決算の売上高は3013億円に上る中堅の生命保険会社だ。同社は1996年に富士生命保険として設立され、2011年にAIG系列の傘下となり、2017年に香港・FWDグループの完全子会社となった。2021年11月に現在の社名に商号変更している。2018年からはオリックス・バファローズのヘルメットスポンサーを務め、2022年シーズンの開幕戦は「Bs本拠地開幕シリーズ2022 supported by FWD生命」として大々的にスポンサードしていた。
被保険者の同意を得ずに無断でがん保険に加入
そんなFWD生命の社員A氏が「こんな不正は前代未聞です」と嘆く。
「FWD生命、その保険商品を販売する代理店のサンユーモメント、そして契約者である扇港電機の3者が“結託”し、被保険者である扇港電機の社員の同意を得ぬまま、無断でがん保険に加入させていたのです。がん保険を契約するには、もちろん、被保険者への保障内容の説明と被保険者の加入への同意が必要です。また、申込書には被保険者自身が押印しなければなりません。しかし、FWD生命らは被保険者である扇港電機の社員の印鑑を無断で捺印し、契約していた」(A氏)
契約者の扇港電機は三重県に本社を構える電気設備資材を取り扱う総合商社。販売代理店のサンユーモメントは愛知県に本社を構える営業部員3名の小さな保険代理業者だ。2021年、扇港電機はサンユーモメントを通じ、契約者を「扇港電機」、被保険者を「扇港電機社員」とした掛け捨て型のがん保険2種類を2度、FWD生命と契約している。被保険者数は同年4月時点で社員783名、同年12月時点では社員771名。これは扇港電機全社員の8割以上の数であり、年間保険料は約1億1300万円にも上る。