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「若いがゆえに『はなもちならない生き物』だった」吉田拓郎(76)が、盟友・KinKi Kidsに贈った“言葉”

7月21日は吉田拓郎、最後のテレビ出演の日

2022/07/21
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 そこへ新たな番組の話が持ち上がる。土曜夜11時台のバラエティ『めちゃ×2モテたいッ!』(『めちゃ×2イケてるッ!』の前身番組)が夜8時に移るので、その空いた枠でKinKi Kidsで愛をテーマにした音楽番組をやらないかと編成からきくちに打診があったのだ。これが『LOVE LOVE~』の企画の発端となる。

 ただし、KinKi Kidsの相手役として当初編成から言われたのは玉置浩二だった。だが、1社提供のスポンサーである松下電器(現・パナソニック)へプレゼンに赴くと、玉置が同社のライバルであるソニー傘下のレーベルに在籍していたことから難色を示されてしまう。そこできくちがとっさに吉田拓郎はどうかと提案すると、先方もがぜん乗り気になった。

出演を渋る吉田拓郎を説得した方法

 こうしてきくちは吉田に今度は新番組に出てもらうべく説得にかかる。吉田としても今度の話には、自分がかねてより夢見ていた、ビッグバンドの生演奏による歌のショー番組を実現できそうだと感じた。彼の頭にあったのは、『ザ・ヒットパレード』など往年の音楽番組でビッグバンドを指揮していたスマイリー小原だ。あんなふうに自分も“踊るバンドマスター(バンマス)”をやりたいと、40代の頃からテレビのプロデューサーなどと会うたび冗談半分で話していたという。

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 この提案にきくちも面白そうだと思ったが、現実を考えると吉田拓郎ひとりでは数字(視聴率)がとれないと正直に伝えた。では、数字を取るにはどうしたらいいのか? と逆に質問され、きくちはKinKi Kidsが相手ならどうかと切り出した。当時まだCDデビューもしていない若手と組むという話に、吉田は戸惑わずにはいられなかった。それでもきくちには「KinKiがブレイクするのは間違いないんですから、そのときに番組をやってる立場は非常に評価されるんです。その一員になりましょうよ」と説得される(※2)。

吉田拓郎(左)と井上陽水 ©文藝春秋

 別の話では、このとき吉田はきくちからKinKiの2人の主演ドラマ『若葉のころ』のビデオを渡され、それを観た夫人の森下愛子がすばやく反応して「あなた、KinKiって最高よ!」とプッシュしたとも伝えられる(※3)。ともあれ、吉田は結果的に出演を承諾する。集まったミュージシャンも、ベーシストの吉田建やギタリストの高中正義など理想のメンバーが集まった。

 ただ、KinKiら若い共演者のトークにはなかなかついていけなかった。のちに『週刊文春』の阿川佐和子との対談で、最初の頃の拓郎さんはトークの部分で嫌そうな顔をして座っていたと指摘され、《不愉快でしたよ、あんなもん(笑)。お客さんの前で、何の話してるのかも分かんないのに、じいっと聞いてなきゃいけないのは辛いんですよ》と明かした(※4)。同じ対談ではまた、当初は《番組収録が終わるたびに、毎回バンド全員がやけ酒飲みに行って、口癖のように「降りる」とか言ってました。僕も収録の日になると、かみさんに「行きたくない」って駄々こねて、「男らしくしなさいッ」とか怒られたり(笑)》とも振り返っている。