初登板で、初球から10連続でボール判定
そんな青柳のあまりの急成長ぶりに驚くプロ関係者は多い。谷繁氏もほんの数か月前には「(阪神には)絶対的エースがいない」と言っていたほどだ。前出とは別の元NPB監督も同調する。
「自分もまだエースではないと思っていた。3年やって一人前ということ以上に、ルーキーイヤーのことを思い出すと、本当に変わったのか、半信半疑でしたから」
青柳はプロ1年目の16年のオープン戦初登板で、初球から10連続でボール判定を受けたことがある。
「全くストライクが入る気がしませんでした。公式戦でデビューしても荒れ球は変わらず、特に右打者は当たるんじゃないかと恐怖感を覚えていました。多難な前途を予感しました」(同前)
同年は68回1/3で48四死球と制球難に課題を残した。その後も“ノーコン病”は完治しなかったが、昨季は156回1/3で51四死球と大幅に減らした。今季(7月15日現在)は105回1/3で21四死球と、さらに改善した。
「新人の頃を考えると、いつこの世界からいなくなるのかなと思っていました。しかし、長いこと球界にいますが、短期間でこんなにレベルアップした選手は見たことがありません。本当に不思議な選手」(同前)
その成長スピードは球界の常識を覆すものだったのだ。
平成の大エース斎藤雅樹に重ね「令和の大エース」襲名へ
自身初の開幕投手に指名された今季は直前にコロナに感染したため務めを果たせず、初登板は4月15日にずれ込んだ。しかし復帰後は快進撃が続き、ここまでの黒星は5月6日の中日戦で、9回まで完全試合だった中日の大野雄大と投げ合った時に喫しただけだ。
最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、さらに最高勝率など投手部門のタイトル総なめの勢いで、青柳は快投を続けている。特に近年では少なくなった完投が多く、阪神の投手では2003年の井川慶以来の沢村賞すら狙える位置につけている。谷繁氏も「ストライクゾーンの中でコントロールできるようになった。去年はストライクゾーンの中に必死に投げ込んだ結果、勝った。(今年は)意図してあそこに投げよう、ファウルを打たせよう、ゴロを打たせようと(いう投球に進化した)」と、一流から超一流の領域に足を踏み入れつつあることを認めた。
さらに横手投げで完投能力が高い類似点から、「平成の大エース」と呼ばれた元巨人の斎藤雅樹に重ね「令和の大エース」襲名に期待が高まっている。
ドラフト順位からいえば、タイガース史上に残る異例の大出世だ。