中国マネーに期待する新興国、警戒を隠さない国
同構想に対しては、インドを筆頭に安全保障上の懸念から警戒感を隠さない国もあり、また環境問題や現地住民の反対から建設事業がとん挫する例も報告されている。その一方で、アフリカを含めた多くの新興国は、新たな成長エンジンとして中国マネーやインフラ事業への期待感があることも事実だ。2017年5月に北京で開催された「一帯一路国際協力サミットフォーラム」に29か国の首脳、日米を含む130か国、
一帯一路の特徴は、第一に空間として中国の西に広がる地域に目を向けていることである。日米ではなく、東南アジア、中央アジア、中東、さらにはアフリカをも視野に入れている。したがって同構想は中国と新興国、中国と欧州との経済・政治関係の強化を目指している面が明確である。第二の特徴はその内容面での包括性である。物理的なインフラがとりわけ注目を集めるが、制度的な協調や中国発の産業標準の普及を目指すといった内容も含まれている点には注目する必要がある。
日本の「一帯一路」への距離感は?
当初、日本政府は無関心あるいは警戒心から「一帯一路」と距離を取ってきた。しかし「一帯一路国際協力サミットフォーラム」以降、トーンに変化が見られる。11月には安倍首相が条件付きで「一帯一路」への協力に言及し、「第三国での日中民間経済協力について」と題した指針が関係省庁によって策定された。重点分野は省エネ・環境、工業団地や電力インフラの産業高度化、そして物流だ。こうした態度の変化の背景には財界の要望があったと考えられるが、北朝鮮問題の深刻化を指摘する識者もいる。
日本政府は「一帯一路」への選択的関与と同時に、これまで通りアメリカを含む周辺国との協調関係の強化も目指している。日本政府は米国が抜けた以降も、TPPの枠組みを重視し、TPP11としての大筋合意に至った。また「自由で開かれたインド太平洋戦略」(Free and Open Indo-Pacific Strategy)を通じて、日本、アメリカ、オーストラリア、インドを起点とする多国間枠組みの構築を模索し始めている。この二つの動きをシンプルに「関与とヘッジの両面的対応」と理解すべきか筆者には判断がつかないが、政府の対応がより多面化していることは事実だろう。