中国政府が大陸を覆う広域経済圏構想を提起し、中国企業が新製品や新サービスをグローバルマーケットに提供する時代になった。国外ではインフラ建設を筆頭とする開発計画を立ち上げ、国内からはエレクトロニクスやインターネットの分野で有力企業が台頭する。以下では中国経済を起点として生じつつある変化について国内外の両面から紹介する。
中国が目指す新しい地図「一帯一路」とは?
2013年に習近平体制となって以降、中国は広域経済圏構想「一帯一路」(One Belt, One Road)を始動した。当初は注目の集まらない構想であったが、近年、アジアのみならず世界の注目を集めている。その背景には、第一に、中国の経済力の高まりがあり、第二には、2015年以降に同構想を資金面から支えるアジアインフラ投資銀行(AIIB)やシルクロードファンドが設立されたことがある。さらに第三に、トランプ政権の誕生を契機としてアメリカがTPPからの離脱を決定したことが、相対的に中国の構想への注目を高めた。
「一帯一路」とは、陸路で中国沿海部から中央アジアを経由して欧州を結ぶ「シルクロード経済ベルト」と、海路で物流の要衝を抜けてアフリカ、欧州へとつながる「21世紀海上シルクロード」によって構成される広範囲な地域を開発しようとする構想である。中国政府が2015年3月に公表している計画文書は、政策協調、インフラの接続、貿易の活性化、資金の融通、人材・文化の交流、これらの5つの面で対象国との関係強化を訴える。