文春オンライン
中国の新しい経済地図 動き出した「デジタル一帯一路」

中国の新しい経済地図 動き出した「デジタル一帯一路」

2018/01/01
note

ドローン、ゲノム解析……ニューエコノミーが書き換える中国地図

 中国国内に目を向けると、ニューエコノミー、とくにエレクトロニクスとIT業界の発展に伴って、中国国内の経済地図も徐々に更新されている。

 これまで中国の主要都市といえば、北京、上海、広州がその筆頭に上がってきた。しかし新興ベンチャー企業やデジタル経済の視点から見ると、北京に加えて、香港と隣接する深圳、上海と隣接する杭州への注目が集まっている。

 筆者が現在滞在している深圳市を例に取ろう。深圳市は1970年代末に始まった改革開放政策の先頭に立ち、かつては下請け工場が多く、単純な労働集約的な産業が集まっているに過ぎないと評価されてきた。しかし近年では、通信機器大手の華為技術(HUAWEI)、中興通訊(ZTE)に加えて新たな成長のけん引役としての有力企業が数多く生まれている。SNS大手で世界第4位の企業価値を誇る騰訊(Tencennt)、民間用ドローン市場で世界市場を席巻する大疆創新(DJI)、ゲノム解析企業として世界最大の規模を誇る華大基因(BGI)といった新興産業の雄がこの街で育った。この背景には圧倒的に若い人口構造を背景として企業家を夢見る若者がこの街に流入していること、そして起業と成長を支えるエコシステムが現地に形作られつつあることを指摘できる。

ADVERTISEMENT

ラスベガスのコンベンションでの、DJIのブース ©getty

 エレクトロニクス業界の動向を見る上では深圳がより重要になり、また中国のデジタル経済を動かす人々は北京や上海だけでなく杭州にも集積しつつある。「デジタル時代の中国経済地図」の上には新たな拠点が生まれつつある。

ソフトバンクと中国テック企業の動向

 それでは中国のニューエコノミーに、日本企業はどのように関わっているだろうか。大企業の中で最も積極的に関わっているのは、日本でも異色ともいえる大規模なM&Aをテック業界で進めてきたソフトバンクである。Eコマース大手アリババの大株主であること、そしてフィンランドのゲーム会社Supercellをテンセントに売却したこと、中国最大の配車アプリ滴滴出行(Didi Chuxing)に5500億円を出資したこと等々、ソフトバンクは中国のテック企業と深く関わる。同社が買収した半導体設計会社ARMは、深圳市に合弁企業を設立する方針も公表された。

ソフトバンクの孫正義氏  ©共同通信社

 日本の技術のある中小企業による需要開拓や、スタートアップ企業が中国のベンチャーエコシステムと関わろうとする動きも見られている。「日本で研究開発、海外で製造、日本で販売」という製造業分業モデルを越えて、アジアの技術や発想を活用したり、アジアの課題解決に取り組んだりする案件が徐々に見られてきている。