「亡くなった高井直子さんの契約を取った時、あいつは『銀行系出身の資産家のおばさんで高額な契約がとれたわ』と得意げに自慢していました。年間の保険料だけで500~1000万円だと言っていましたが、まさかその裏で顧客と養子縁組をして、自分で保険料をもらうなんてえげつないことをしていたとは……」(高井凜容疑者の保険会社時代を知る知人)
総額1億5000万円の生命保険を契約した女性が溺死し、疑われたのは契約に携わった保険外交員の男だった――。2021年7月に大阪府高槻市の民家で高井直子さん(当時54)が死亡した件に関連して、大阪府警は直子さんの養子である高井凜容疑者(28)を、有印私文書偽造・同行使の疑いで逮捕した。養子縁組の際に虚偽の届け出をしたと見られている。
死亡した直子さんは自宅の浴槽で全裸で発見され、顔は一部水に浸かった状態だった。死因は溺死。一見すると事故のようだが、大阪府警は今年2月時点では“他殺”だと確信していたという。ある全国紙の社会部記者が解説する。
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「2021年7月26日に、直子さんが勤めていた都市銀行のグループ会社を無断欠勤し、会社から連絡を受けた親族が自宅を訪れました。親族が合鍵で部屋に入ると、直子さんが浴槽で亡くなっていたそうです。事故の可能性もありましたが遺体からはアルコールや薬物は検出されず、通帳や現金70万円が入った封筒がテーブルに放置されていたことで金品目当ての線もすぐに消えました。司法解剖の結果、両手首を結束バンドで巻かれた跡が見つかり、直子さんは縛られて抵抗できない状態で浴槽に沈められて死亡したことが判明しました。すぐに凜容疑者が捜査線上に浮上し、数日後には保険会社関係者の聞き込みを開始。昨年の秋には凜容疑者の自宅も殺人容疑で家宅捜索しています」
「身寄りのない直子さんが後継ぎとして養子縁組を打診してきた」と証言
この事件が注目を浴びた最大の理由は、直子さんが死亡前に総額1億5000万円の生命保険に加入し、その受取人が死亡の5カ月前に養子縁組をした凜容疑者だったことだ。凜容疑者は2021年2月に直子さんと養子縁組し、姓を「松田」から「高井」に変えている。そして直子さんの死亡後、預金など数千万円を相続人として受け取ったという。
「直子さんは2社合計で1億5000万円の生命保険に加入していましたが、そのうち1つは凜容疑者が在籍していた大手外資系保険会社のもの。凜容疑者は保険会社を退職したあとに直子さんの養子になり、保険金の受取人を自身に変更したことがわかっています。凜容疑者は捜査に対して『身寄りのない直子さんが後継ぎとして養子縁組を打診してきた』と話していますが、財産狙いで接近した可能性も高い。
しかも凜容疑者は実は既婚者で妻がいるのですが、養子縁組の際には妻と実父の署名を偽造したと見られていて、今回はまずこの容疑で逮捕しています。そして大阪府警の本命はもちろん殺人容疑での立件でしょう」(同前・社会部記者)