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特集観る将棋、読む将棋

「好きなように、好きなだけ」将棋も読書も、楽しみ方はそれぞれ違って良い

2022/07/29

 夏休みが始まった。

 始まってしまった、という方が正しい表現だろうか。

 約1カ月半の間、君たちは毎日お家にいるんだね。お母さんは嬉しいよ……。

 重たすぎて泣きながら長女が持って帰ってきた荷物の中に、夏休みの宿題の読書感想文を見つけて懐かしく思った。外ではいつの間にか、今年もセミが鳴いている。

なるほどそう来たか、とうなずきながら対局室へ

 対局の日、気分転換に将棋会館内を歩いていると、今年のJT杯将棋日本シリーズ・テーブルマークこども大会のポスターが目に入った。

将棋会館2Fの掲示板。左端がJT杯のポスター ©上田初美

 JT杯のポスターは毎年テーマがあり、いつも自分が子どもだった頃の気持ちをくすぐられる。過去に使われていた「成るとは、成長すること」は、今でも私の好きなフレーズだ。

 今年のポスターを見た瞬間に、今までとちょっと違うな、と感じた。

 例年はシンプルな配色が多かった印象があるが、今年は全面を使った、とてもカラフルなデザインである。

 テーマは「好きな将棋を、好きなように、好きなだけ」。

 なるほどそう来たか、とうなずきながら対局室へと戻った。

「観る将」と呼ばれる、将棋を観て楽しむ層が格段に増えたのは、ここ10年ほどだろうか。対局がインターネットで中継される機会が増え、それを通じて対局者の様子や解説をエンターテインメントとして楽しんでくれている。

 独自の早指しルールで、現在は団体戦として行われているABEMAトーナメントは、その良き例だろう。スリリングな対局と、控室の団らんがうまくマッチングしており、将棋を指さない人でも楽しめる番組になっている。

「読む将」もいるとかいないとか…

 それまでの将棋の楽しみ方と言えば、将棋を指して、自身の実力向上や勝ち負けを楽しむのがメインだった。

 将棋盤を挟むことによって、年齢が離れている人と交流ができたり、棋力が近い友人ができたり、エンターテインメントというよりはコミュニケーションツールとしての一面が強かったように思う。

 観る将の中にはまったく将棋を指さない人もいるし、一方で、指すのは好きだけど中継は見ないという人もいる。もちろんどちらも楽しんでいる人もいる。

 時代の流れと共に、将棋の楽しみ方も増えていて、最近では棋士や女流棋士の文章を読むのが好きな「読む将」もいるとかいないとか……。将棋を指すよりも詰将棋を作るのが好きな人もいる。

 色々な楽しみ方のお手伝いをするのが私たち将棋指しの仕事だが、同時に私たちはどれも楽しんでいる派の筆頭かもしれない。

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