MVP選手として迎えた2022年シーズンも、投手・打者の二刀流で活躍するエンゼルス・大谷翔平選手。その模様はスポーツ番組だけでなく、ニュースやワイドショーでも取り上げられ、その結果に一喜一憂するのが私たち日本人の日常生活と化している。
ここでは、そんな大谷選手のアメリカでの活躍の秘密を記した、エンゼルスの番記者、ジェフ・フレッチャー氏の著書『SHO-TIME 大谷翔平 メジャー120年の歴史を変えた男』(タカ大丸 訳、徳間書店)から一部を抜粋。2018年、エンゼルスに移籍した大谷選手が、シーズン開幕前に直面していた“メジャーの壁”について紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)
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「大谷はまだ、メジャーのレベルに達していない」
大谷は、打席でも同じくらい苦戦していた。
スプリングトレーニング初期に、大谷の打撃面の長所はパワーで、練習でスタンド奥まで放り込む姿を見て、コーチと選手一同が感嘆の声をあげていた。
エンゼルスは通常、最初のオープン戦の前に練習場からテンピ・ディアブロ・スタジアムへ移動する。球場での初日、大谷はセンターバックスクリーン超え、つまりは本塁から420フィート離れ、高さ30フィートの壁を超える1打を放った。あそこを超えられるのは、ごくごく限られた最高の長距離打者だけだ。
打席での長距離砲とは別に、大谷はメジャーの投手と対戦すると、まだ力不足のように感じられた。最初のカクタスリーグの試合で24球から1安打を記録し、これ自体は今後の期待につながる結果だったが、その後は20打席でわずか2安打にとどまった。
左の長距離打者として、どうも左投手の大きく曲がる変化球に手こずっている様子が見られた。同僚の左投手タイラー・スキャッグスとのシミュレーションゲームで、大谷はカーブに対してヘルメットを飛ばしてしまうくらい激しく空振りした。
大谷はその後のカクタスリーグの試合でも、14打席で無安打の泥沼にはまり、28打数3安打というさんざんな結果だった。
全米で知られる名物野球記者が「大谷はまだ、メジャーのレベルに達していないとスカウトが評している」と断じたのは、まだスプリングトレーニングの真っ最中だった。
「大谷の打席は全然ダメだ、というのがスカウト陣の評決だ」
「ヤフー! スポーツ」のトップで、ジェフ・パッサン記者が断言した。パッサンが報じたところによると、8人のスカウトたちがアリゾナでの大谷の状態を見て、深刻な疑念を抱くようになっているというのだ。