スカウトたちが語る、大谷が抱える問題の核心
スカウトたちによると、問題の核心は、大谷が日本でメジャーレベルの投球を見たことがなく、特に曲がる球に対処できていないことだという。
「言ってみれば、本物のカーブを見たことがなかった高校生の打者みたいなものだよ」
あるスカウトが、パッサンにそう耳打ちしたという。
「速球とチェンジアップは見たことがあったのだろうけど、いきなり高校生にメジャーリーグの球を打てと言えるのかね?」
別のスカウトも、そんなことを言ったという。
「メジャーに来て、新しく何かを学ぶということはないんだ。無理な相談だよ」
パッサンの辛辣な記事は3月9日に出され、そのあと数日間も大谷は打席で苦闘した。
1週間後、大谷は先発投手として前述の悪夢の1日を迎える。
コロラド・ロッキーズを相手に2回7失点で降板した一戦で、この時点で、大谷はメジャーのレベルに達していないと断定したとしても納得のいく──落胆はするが──事態だった。ただ、23歳の若手選手で“海外のアマチュア枠”での契約だったので、ある程度の許容はできた。
1年目のスプリングトレーニング中はまだマイナー選手扱いだったので、エンゼルスは無理に大谷をメジャー枠に押し込む必要がなかったのだ。また、エンゼルスは大谷を最初にマイナーへ送っておけば、長期的な利益を見込める可能性もあった。
選手は、6年間メジャーリーグに所属したあとにくる最初の冬に、FAの資格を獲得する。もし、大谷が2週間でもマイナーリーグに行けば、2018年は1年通してメジャーにいなかったことになるので、FAの権利獲得は1年延びることになる。
この事例が直近で発生したのは、数年前、シカゴ・カブスが期待の大きかったクリス・ブライアントをシーズン最初の2週間、マイナーに送っていたというものだ。
ほとんどの人は、彼の権利を1年妨害するための工作だと受け取った(ブライアントの代理人は不当性を訴えて、この問題の解決は2020年まで持ち越された。調停の結果、マイナーに降格させる処遇は球団の人事権の範囲内という結論になった)。
カブスは、メジャーでやっていけるはずのブライアントをマイナーに降格させたと広く批判されたが、仮にエンゼルスが結果を出せていない大谷に対して同じことをしても、誰も文句を言わないはずだった。
日本の報道関係者はアメリカの同業者に対して、エンゼルスのトリプルAの本拠地であるソルトレイクシティはどんな街なのかと聞き始めるありさまだった。
それでも、エンゼルスは大谷をソルトレイクシティ送りにはしない様子だった。