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何故、「来年じゃないの?」「来年じゃないよ」論争は起こるのか?

 今回、相当数の人が「山川さんは今オフにソフトバンクに行くんだ」と思ってしまったようです。仕方ないことです。このFA権取得にまつわる情報は、あまりにわかりづらく、調べづらい。日本野球機構が発表しているのは出場選手登録の公示だけで、誰が現時点で何日出場選手登録されていて、いつFA権を得る見込みなのかは、公示をもとに手計算で求めるしかありません。

 しかも、その手計算にしてもブラックボックスの部分があります。グラウンド上で負った怪我によって登録抹消となった期間について救済する「故障者特例措置」という仕組みがありますが、これが適用されているのかいないのか、一般のファンには確かめるすべがないのです。その一例として、埼玉西武ライオンズ・森友哉さんのFA権取得の時期については、いまだにファンの間でも「今年説」と「来年説」が飛び交っています。

 森友哉さんの場合、カギとなるのは2017年3月5日のワールド・ベースボール・クラシック強化試合、埼玉西武VSキューバ戦で負った骨折による離脱に、「故障者特例措置」が適用されるのかどうかという点。規定の主旨からすれば適用されてしかるべきではありますが、WBC強化試合にもこの規定が適用されるのかどうかは不明瞭で、適用されたかどうかの公示もないという状態。適用されていれば森さんは今季中のFA権取得が可能であり、適用されていなければ来季以降ということになりますが、それがいまだ定かでないのです。(※一部「故障者特例を適用済み」とした記事もあり)

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 ライオンズの選手たちであれば「早くここから脱出したいなぁ」とベルーナドームの屋根にナイフで「正」の字を彫って数えているかもしれませんが、一般のファンにとっては誰が何年にFA権を取得するのか、あと何日でFA権を取得するのかが極めてわかりづらくなっているのが現状。宇宙戦艦ヤマトばりに、常に日本野球機構の公式サイトで「脱出まであと●日」という表示をしてくれていれば、今回の噂話でも年単位の論争にはならなかったはずです。そして、早くても来年だとわかっていれば「まだ今するほどの話ではない」と噂話自体もしなかったかもしれません。

 そのあたりの厳密な日数を明確にしてもらえれば、「この選手もう少しでFA権取得ですね」「今すぐ2軍に落としましょう」「1年勾留延長!」なんて計算もしやすくなりますし、ファンとしても別れの心構えがしやすくなるというもの(※お見送りするパターンしか考えていないライオンズ脳)。日本野球機構には今回の「音声」の件について、「ライブ配信のカメラの音声は切っておこう」という反省ではなく、「誰がいつFA権を取得するのかファンのためにちゃんと知らせよう」という反省をしてもらいたいなと思います。わかりやすくて確かな表示がされていれば、今回の噂話も「所詮は噂話」と一笑に付され、ざわつくようなこともなかったでしょうから。

 まぁ、今回の場合は、山川さん本人が第2戦の試合中に「俺、ソフトバンク行くの!?」「早くても来年だよ」「FA権取得まであと●日」的な告知フリップを出してもよかったかもしれませんが、全員がそうやって発信できるわけではありませんからね。選手本人も、ファンも、噂話をする人も、みんなにとってわかりやすいカウントダウン、お願いしたいものですよね。そんなカウントダウンがあれば、ライオンズに入団した選手もナイフで「正」の字を彫らなくて済みますからね。

 以上、お見送り球団埼玉西武ライオンズファンからのお願いでした!

 この選手が出て行くか出て行かないか緻密な議論いっつもしているライオンズファン好き~

 でもどんな議論しても結局出て行くからあんまり議論の意味ないの好き~

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