「たしかに市や市教委は謝罪に来ましたが、自分達の落ち度については認めていません。報告書が公表された後、市教委との話し合いを求めましたが、電話一本もありません。市教委は『学校を通じて連絡をしてください』というが、学校に言っても何の反応もありません。
しかし、市教委には、『なぜこんなことが起きたのか』『責任の所在はどこにあるのか』と聞きたいんです。名古屋市では検証委員会ができていますが、問題を追及しないまま再発防止をしようとしているように見えます。再調査の報告書が出たのはいいですが、遺族と学校、市教委が顔を合わせて話ができていないのです。これが提訴した一つの理由です」
遺族側は話し合いで和解したかった
提訴の前に、ADRも申し立てた。話し合いが成立しなかったのか。
「昨年12月、河村たかし市長とは水面下でやりとりをしていました。私たちは最初から訴訟を望んではいないため、解決金の金額も任せていました。それくらい、私たちは折れています。しかし、今年3月、河村市長から電話があり、『ADRはできません』と言われました。理由を聞くと、『市教委が対応しないから』とのことでした。理解に苦しみます。
『じゃ、どうしたらいいのか?』と河村市長に問うと、『訴えてくれ』と言われたのです。こちらは話し合いで和解したかったんですが、このことも訴訟した理由の一つです。行政が教育行政に介入できないというのは『思想介入がダメ』という話でしょう? 不祥事があった場合は違うのではないでしょうか」
プロジェクトチームの会議では蚊帳の外
再調査報告書を受けて、21年10月2日、「学校でのいじめによる自死防止対策検討プロジェクトチーム」が市長の指示で立ち上がった。座長は廣澤一郎副市長(当時)。調査報告書が出されても、何も動きがない自治体もあるが、名古屋市は一定の動きをした。しかし、信太郎さんは、プロジェクトチームのあり方や報告内容に納得していない。
「結局、3回の会議で終わりです。しかも、この会議では私たちは蚊帳の外でした。一度だけZoomを繋いで会議に呼ばれたことがありました。そこで副市長が『プロジェクトが立ち上がります。お父さんの気持ちをどうぞ』と言われ、何を話していいかわからないまま、20分ほど話したことがありました。