2018年1月5日、名古屋市名東区の中学1年生、齋藤華子さん(享年13)が自宅マンションで飛び降りて死亡した。この件をめぐり、学校が「何も対処しなかった」として、父親の信太郎さん(50)ら遺族が、名古屋市に対して1540万円の損害賠償を求める訴えを名古屋地裁に起こした。
学校や市教委の「いじめ対策検討会議」はいじめを認めていなかった。しかし、21年7月、「再調査委員会」は、いじめがあったと認定し、それが自殺の一因になったとの判断を示した。その後、遺族は市教委との話し合いを求めたが実現せず、裁判外紛争解決手続(ADR)の申し立てもしたが、叶わなかったため、提訴することになった。
「こころのSOS」によるテストの結果で心理状態は把握できた
「全国で娘が亡くなったときと同じような問題(隠蔽などの杜撰な対応など)が起きています。裁判をすることで名古屋も変わり、全国も変わって欲しい」(原告の信太郎さん、以下同)
訴状によると、華子さんは、信太郎さんの転勤で、17年9月1日、名古屋市内の中学校に転校した。ソフトテニス部に入部したが、練習はハードで、厳しいルールも存在していた。11月後半から、華子さんが部員Aに練習相手を頼んだが、手伝ってくれず、無視されることがあった。死亡後のアンケートの回答でも、いじめがあったことをうかがわせる回答もあった。
また、10月11日、中学校は「こころのSOS」によるテストをした。その中で、華子さんは「最近、悲しいことやつらいことがあった」「朝、こころやからだがだるくて動きたくない」「泣きたいような気持ちになる」「友達は本当の自分のことをわかっていないと思う」などの項目にチェックしていた。心理テスト「ハイパーQUテスト」では、総合評価は2番目に低い「不満足群」だった。華子さんがこうした心理状態だと把握できたのに、学校が何も対処せず安全配慮義務を怠ったと主張している。
遺族と学校、市教委が顔を合わせて話ができていない
再調査委員会がいじめを認定した後の21年8月、名古屋市や市教委の担当者は、華子さんの自宅を訪れ、遺族に謝罪した。そんな中で提訴に踏み切ったのはなぜか。