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「独りぼっちは決して寂しいものではない」76歳でリタイアする吉田拓郎の「終活」

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 そして――。11年12月、吉田はこのマンションの権利の10分の2を森下に生前贈与したのだ。

「婚姻歴20年を超えると夫婦間贈与の特例があり、評価額2000万円分まで贈与税がかかりません。10分の2というのは、贈与税がかからない分だけ権利を分けたのでしょう。こうすれば、相続の時は10分の8の分だけ税金を払えば済みます」(相続問題に詳しい弁護士)

 16年には所有していた南麻布の高級マンション(115平米。推定2億円)を売却。前述の逗子の邸宅も約2年前に解体している。

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独りぼっちは決して寂しいものではない

 一方で音楽活動の幕も下ろし始める。コンサートは19年が最後となった。

「20年にも予定されていましたが、コロナの流行のため中止。客が声を出せないなど、制限がある中でのコンサートは『自分のスタイルに合わない』という考えで、きっぱりと断念しました」(スポーツ紙記者)

 森下も20年に俳優業を引退したと吉田は自身のラジオで発表。21年8月には2人の個人事務所「竹田企画」も清算した。

 そして21年11月から集大成として最後のアルバムの制作をスタートさせた。

「元々外食嫌いということもあり、コロナ禍ではほとんど家から出ることはなかった。アルバム制作もスタジオで作業するスタッフと、自宅から電話でやり取りをして進めていました。ようやくスタジオに入ったのは今年3月、ボイストレーニングを行うためです。レコーディングには、長年親交が続く数少ない音楽仲間の小田和正がボーカルで参加し、キンキの堂本剛もアレンジとギターで参加しています」(同前)

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 ラストアルバムには、その制作ドキュメンタリーを収めたDVDが付属している。その最後のシーンでは伝説となったつま恋の野外コンサート会場を再び訪れ、今の心境をこう語っている。

「独りぼっちだということを本当に自分でわかることができれば、その独りぼっちは決して寂しいものではなくて、愛につつまれた、みんなから愛されたり、人を愛したりすることができる、そういうものにつながっていく」

 吉田の自宅を訪ね、「文春読者にメッセージを」と頼んだ。すると一言、こう語るのだった。

「私はすっぱり、リタイアするつもりでおりますので」

「独りぼっちは決して寂しいものではない」76歳でリタイアする吉田拓郎の「終活」

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