2021年12月、新宿区歌舞伎町の高層タワーホテルで小学3年生の男児(9)が母親から突き落とされ死亡した事件。7月29日、殺人罪などで起訴されていた母親が東京湾岸署内の留置場で倒れているのが見つかり、搬送先の病院で死亡が確認された。口には紙が詰まっており、自殺と見られている。

 事件現場では泣きじゃくっていたという母親。歌舞伎町で一体何が起きていたのか。事件を報じた「週刊文春」の記事を再公開する。(初出:週刊文春 2022年1月13日号 年齢・肩書き等は公開時のまま)

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 東洋有数の歓楽街・東京都新宿区歌舞伎町。喧騒はやがて途絶え、“眠らない街”を束の間の静けさが包み込んでいた。昨年12月29日の朝7時過ぎ。静寂を切り裂いたのは、あまりにも残酷な衝撃音だった。

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小学3年生の男児が約75メートルの高さから落下

 近隣の駐車場で夜勤をしていた男性が振り返る。

「パーンと、すごく大きな音がして……。ああ、誰か落ちたなと。直後、目の前にある歌舞伎町交番から警察官が一斉に飛び出してきて、ホテルの上の方を見上げていました」

 その視線の先、ホテル高層階の非常階段で人影が動いた。警察官が駆け付けると、23階の非常ドア付近で取り乱し、泣きじゃくる母親(47)と、小学1年生の女児(7)の姿。約75メートルの高さから落下したのは、小学3年生の男児(9)だった――。

男児が転落死した歌舞伎町のホテル

母親は「3人で順番に飛び降りるつもりだった」

「男児は即死。身柄を確保された際、母親は錯乱状態だった。母親が非常階段の手摺り部分に男児を座らせ、殺意を持って突き落としたと認めたため、殺人容疑で逮捕した」(捜査関係者)

 現場は2015年に開業した地上28階、高さ90.5メートルの高層タワーホテル。大浴場を完備した最上階からは、新宿副都心の街並みを一望できる。

「非常階段の外に面した側にはネットが張られていたが、男児を突き落とした箇所は破られていた。その場には母親が脱いだブーツが揃えて置かれてあった。母親は『3人で順番に飛び降りるつもりだった』と話しており、無理心中を図ろうとしていたようだ」(同前)