事実上の参加表明だった。米大リーグのオールスター戦前日の7月18日、エンゼルスの大谷翔平(28)は来年3月に開催されるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)への出場について、「自分に実力があるのであれば、選んでもらえるのであればプレーしたい気持ちはもちろんあります」と前向きな姿勢を示した。

大谷翔平選手 ©️文藝春秋

 その一方で日本ハム時代の恩師でもある日本代表の栗山英樹監督(61)は、なぜか歯切れが悪い。日本で開催される1次ラウンドの日程が発表された7月28日の記者会見では「全ての選手が出たいと思ってくれていると信じている。そういう形で受け取った」と終始、言葉を選んで答えた。

栗山英樹日本代表監督 ©️時事通信社

「自分を理解してくれている方が監督というのはやりやすいかなと思います。一緒に頑張りたいなという気持ちにはもちろんなる」と、ストレートに思いを口にした大谷とは対照的だった。

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「必要ですか? 翔平」とぶっきらぼうに答えた結果…

 この栗山監督の発言について、WBCで優勝を経験した元日本代表コーチが背景を読み解く。

「もともと去年(日本ハムの監督を退任した)栗山さんが日本代表監督に抜てきされたのは大谷と直接、コミュニケーションが取れる人だから。大谷を招集するための監督であることは明らかでした。既に水面下では栗山さんが代表入りを打診し、大谷から内諾を得ているはず。あくまで全ての候補選手の中からフェアに選出している、“出来レース”ではないように見せているのだと思います」

 栗山監督は8月に渡米し、日本選手が所属するメジャー球団の試合などを視察する予定だ。“公式行事”を済ませる前のフライングは厳に慎んでいるということのようだ。

日ハム時代の大谷翔平選手と栗山英樹監督 ©文藝春秋

 さらに、栗山監督自身の“トラウマ”との関連性も指摘されている。昨年12月の監督就任会見で大谷のWBC出場を問われると「必要ですか? 翔平」とぶっきらぼうに答えた。その年「9勝、46本塁打」でメジャーのMVPに輝いた選手が3大会ぶりの覇権奪回に、必要でないはずがない。

「この発言は各方面のひんしゅくを買いました。何のために代表監督に就任したのか自覚があるのか、と。大谷が出れば日本ラウンドでの観客動員、テレビ視聴率、スポンサー集めなどでプラス数十億円は経済効果がアップすると見込まれています。大谷招集はある意味、代表の優勝以上に栗山監督の使命と言えます。あの会見以降、大谷の出場に関連した発言の影響力の大きさを痛感したのか、栗山監督は慎重になっています。大谷の選出が確実になるまでは踏み込んだ発言を避けるようにしているのでしょう」(在京キー局関係者)