「華々しく登場し、また、その薬価の高いことでも話題になった、2022年現在は1カ月約100万円のオプジーボでも、例えば、肺がんに対する生存期間の延長効果は2.8カ月といわれている」
自身もステージ4のがんを患い、共生することを選んだベストセラー作家で緩和ケア医の山崎章郎さん(74歳)。山崎さんが明かす「抗がん剤治療」の厳しい現実とは? 新刊『ステージ4の緩和ケア医が実践する がんを悪化させない試み』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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標準治療とは
さて、改めてステージ4の固形がんに対する標準治療である抗がん剤治療の現実を考えてみた。
例えば、国立がん研究センターホームページの「がん情報サービス」では、「標準治療」の意味をこう解説する。
「標準治療とは、科学的根拠に基づいた観点で、現在利用できる最良の治療であることが示され、ある状態の一般的な患者さんに行われることが推奨される治療をいいます。一方、推奨される治療という意味ではなく、一般的に広く行われている治療という意味で『標準治療』という言葉が使われることもあるので、どちらの意味で使われているか注意する必要があります」
続けて「なお、医療において、『最先端の治療』が最も優れているとは限りません。最先端の治療は、開発中の試験的な治療として、その効果や副作用などを調べる臨床試験で評価され、それまでの標準治療より優れていることが証明され推奨されれば、その治療が新たな『標準治療』となります」と説明する。
要するに、がん治療における標準治療は、現時点での最良の治療である、ということである。
薬物療法とは
同ホームページで標準治療の一つに位置付けられている「薬物療法」の項では、その目的は、「治癒」と「延命・症状緩和」である、としている。
その中の「治癒」の項では、「一部の血液やリンパのがんなどでは薬物療法のみで治癒を目指すことができますが、多くのがんでは、薬物療法のみで治癒を目指すことは困難であり、手術(外科治療)や放射線治療と併用することがあります」と説明している。
また、「延命・症状緩和」の項では「がんが進行していた場合や手術後に再発した場合など、治癒が困難な状況で薬物療法を行うことがあります。この場合の薬物療法は、延命やがんによる身体症状の改善を目的としています。がんの種類によりますが、薬物療法を行わない場合と比べて数カ月から数年程度の延命が期待できます」と説明している。
なお、がんの薬物療法とは、細胞障害性抗がん薬(いわゆる抗がん剤)、分子標的治療薬、ホルモン薬、免疫チェックポイント阻害薬等を用いた治療の総称のことであるが、本書では、その代表でもある細胞障害性抗がん薬(以降は抗がん剤)に焦点を当てて論を進めたい。