「開始3分でカタをつける」

 これは漫画『SLAM DUNK』の山王工業・堂本五郎監督のセリフだ。初めて読んだのはいつだったか? 絵本の代わりにこの漫画を読んで育ったので思い出せないけれど、当時この言葉のド迫力を理解できる年齢じゃなかったことは確かだ。しかしそれから約20年後……奇しくも違うスポーツの現場で、私はそれを現実として目の当たりにする。とある選手によって。

 2015年CSファーストステージ第3戦、その男は巨人軍の1番打者を担っていた。巨人の攻撃が始まる。打席に入る。初球を叩く。打球は右中間を切り裂く。あっという間に三塁へ。続く打者の犠飛でホーム生還。1点先制。一瞬だった。実際には3分以上経過していたのかもしれない。それでも当時東京ドームの2階席から観ていた私には文字通り「あっ」という間で、「これが堂本監督の言っていたことか……」という変な感動が今も胸に残る。大好きになったんだ。そう、立岡宗一郎選手が!

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まさかの戦線離脱

 7年前の話をするには文字数を割きすぎている気がするけれど、色褪せないので、いや、色褪せてほしくないので、もう少し語らせてほしい。この立岡選手のすごいのが、連日デジャヴのようにこんなシーンが繰り返されたことだ。先頭打者で長打を放ち、自らのバットと足で得点圏まで進む。もうあとはゴロや犠飛で1点入る状況を作る。なんてクリーンナップ孝行なリードオフマンなんでしょう。CSファーストステージの打率は実に.417にものぼった。

――立岡宗一郎が「左膝前十字靱帯損傷」で登録抹消

 信じたくない言葉が公式SNSから届いたのは、今年6月10日の夕方頃だったか。前日の全力守備で交錯し、担架で運ばれ、その結果。守備範囲の広い立岡選手だからこそ届いてしまった領域での交錯に思えた。なぜ? 立岡選手という宝に、なぜこんな試練を与えるのか?

「巨人の外野」

 これは日本にある5文字の中でもトップクラスに怖い5文字だと思う。なぜなら、どうやったらスタメン定着できるか全然わからないから。1シーズン成績が良かっただけじゃダメ。若さだけじゃダメ。ネームバリューだけでもダメ。前述の全部揃っていてもダメな時もある(河野調べ)。次から次に目玉選手がやってくるから。他球団からもそうだし、育成から這い上がってきた若手、一芸に秀でた若手、助っ人外国人、タフなベテラン……。そんな中で、生き残ってきた。