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「どうやって自分の価値を出すか」を考え抜く男 巨人・立岡宗一郎は決して色褪せない

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/08/12
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心に沁みたヒーローインタビュー

 プロ入り14年目。冒頭の2015年の大活躍があってもなお、スタメン定着とはならず。それでも必要とされる時が来るまで、若手に混ざってファームでこんがりと日焼けしながら戦ってきた姿。鎌ケ谷スタジアムにファーム戦を観に行ったときも、やっぱりひときわ動きが良くて一人だけ縁取り加工されているように、どこにいるかすぐわかった(河野調べ)。

 一軍に呼ばれ、出場機会があれば爪痕を残してきた。「立岡選手だから触ることができた」そういう打球が何個あったか。守備範囲が広いからこそ、普通の選手では届かない打球に触れてしまい「惜しい!」「今の捕れただろ!」と理不尽な批判に晒される場面も見た。けれど、要所の守備走塁職人がどれだけありがたい存在なのか、今季、特に思い知っているのではないか。

 それに、なんといっても今季初ヒットはプロ初のサヨナラホームラン。ヒーローインタビューで語られた「どうやって自分の価値を出すかというのを一生懸命毎年考えていて」という言葉。食い気味の「最高です」は、過ぎた栄光より、すでに次の仕事に思考が移っている戦士の性がみえた気がして、心に沁みた。

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 立岡選手の価値は、我々ファンにはちゃんと見えている。おこがましいかもしれないけど、今ちゃんとそう発信しておきたい。

4月9日のヤクルト戦、延長10回にサヨナラ本塁打を放った立岡宗一郎

立岡が戻ってくるその日まで…

 7月1日、立岡選手の左膝前十字靭帯再建手術が無事に終了したとの発表があった。

「色褪せてほしくない」私はさっきそう書いたが、それがこのコラムで一番伝えたいこと、切なる願いだ。立岡選手が離脱している間、新しいナイスプレーを見られないことはありえないほど寂しいけれど、存在自体を過去形にするつもりはない。これから「巨人の外野」に魅力的な選手がたくさん現れたとしても、立岡選手の魅力はそのまま。凍結保存しておくから、その間に無理せず戻ってきてくださいね。という気持ち。立岡選手がいない間、立岡選手に「カタをつけて」もらいたかった試合が何度あったか。恋しいよ立岡選手。

 最後に、私事ながら今季はチーム移籍(事務所の移籍)もあり、プロ入り年数(デビューしてから経った年数)も重ねてきて、「私はちゃんと応援してくれる方を幸せにできているのか?」と悩むことが増えた。そんなとき頭をよぎる立岡選手の「どうやって自分の価値を出すかというのを一生懸命毎年考えていて」という言葉。そして鎌ケ谷スタジアムで見た姿。立岡選手が帰ってくるまでに、私も歌手として、もう少し前に進んでいたい。

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