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「お前ら、甲子園はもうあきらめろ」なぜ選手たちに残酷な言葉を? 龍谷大平安・原田監督が人生で最も苦悩した「コロナとの戦い」

『コロナに翻弄された甲子園』 #1

2022/08/06

「選手たちにTシャツを作ってやろう」

 一方で原田は、「選手たちにTシャツを作ってやろう」と考えていた。原田が自らデザインして制作したTシャツを、1年生から3年生まで100人を超える全部員に贈ろうと決めていたのだ。

 これに賛同したのが、現在プロ野球で活躍している平安OBの現役選手たちである。炭谷銀仁朗(2005年度卒。現・東北楽天)、酒居知史(2010年度卒。現・東北楽天)、髙橋大樹(2012年度卒。元・広島東洋)、高橋奎二(2015年度卒。現・東京ヤクルト)らが、「僕たちにもぜひ協力させてください」と言ってくれた。

龍谷大平安OBの炭谷銀仁朗(画像:日本野球機構公式サイトより)

 プロで活躍する選手が多くお金を出して、後輩たちを陰ながらサポートしたいという粋な申し出に、原田は「本当にありがたい」と心から感謝した。

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 今まで体験したことのない、ひと言では表現できないほどの苦しい思いを抱えながら、「甲子園出場」という目標がなくなったなかで日々練習に励む選手たち。彼らの姿を見守ることと、「彼らがここで野球を終えて何年かした後に何らかの思い出になれば」という思いからのTシャツのプレゼントだった。

 実際にTシャツが完成し、プロ野球に進んだOBたちの協力も得たという話を選手たちにすると、全員が「おおっ」と驚き、直後に笑顔を浮かべた。自分が今できる精いっぱいのことだったが、みんなが喜んでくれたことで原田も安堵していた。

 大会が始まると龍谷大平安の快進撃が続いた。初戦の京都工学院に4対0で勝利すると、続く洛星を10対0、嵯峨野を7対0、最後の京都成章との試合では7対0と、投手がオール完封勝ち、見事にAブロックを制した。

 ハイライトは最終戦だった。この大会は「オール3年生で戦う」と原田は決めていたのだが、先発の右腕・西本晴人(現・近畿大)が5回を無安打に抑えると、2番手の左腕・坂尾浩汰(現・日本大)、3番手の右腕・松本樹紀(現・愛知工大)が1回ずつを無安打に抑え、ノーヒッターリレーを完成させた。原田はこの試合の直後のインタビューで、

「最後に一番いいゲームができた。コロナで目標が奪われた彼らもやるせないと思う」

 そう言うと、目を潤ませた。この後、選手たちと話したとき、涙を流している者もいた。甲子園出場の夢が果たせなくなった直後は、決して涙を見せなかった選手たちだったが、代替大会だったとはいえ、「できる力を存分に発揮してやり終えることができた」ことに安堵し、達成感を味わった末の涙だったのではないかと原田は感じていた。同時に「これで彼らも次のステージへ進めるはずだ」と胸をなでおろした。


 

「お前ら、甲子園はもうあきらめろ」なぜ選手たちに残酷な言葉を? 龍谷大平安・原田監督が人生で最も苦悩した「コロナとの戦い」

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