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「依頼者も弁護士も不幸になる」SNSで“無理筋な情報開示請求”をしまくる有名人の目的とは《激変するネット中傷訴訟の10年》

『しょせん他人事ですから』監修弁護士インタビュー#3

2022/08/29

裁判官たちに《wwwww》の意味を説明

――10年前と今では、裁判の進め方も変わりましたか。

清水 もしかすると、裁判で勝てるラインは、ゆるくなったかもしれません。

※画像はイメージです ©iStock.com

――10年前より勝てるようになった?

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清水 勝てるというか、話が通じやすくなりました。2010年頃までは、ネットの誹謗中傷の判例がわずかだったので。

――そうか。そういう時代ですよね。

清水 ええ。当時の裁判官は、ネットの知識がゼロに近かったんです。ところが、誹謗中傷はネットスラングを使うケースが多くて。

――笑いを意味する《w》などは当時からありましたね。でも、裁判関係者にとっては「これは英語のダブリューだ」と?

清水 そうですね。《w》がひとつならまだ説明は簡単なんですが、《wwwww》のように連続する場合、侮辱・嘲笑的な意味合いが加わるじゃないですか。

 ですから、裁判のたびに資料をつけて、「この言葉にはこういう意味がある」など、かなり細かく説明しなくてはいけなくて。

「ハッシュタグとは…」延々と説明

――裁判で、説明するのに苦労したネット用語はありますか。

Ⓒ文藝春秋

清水 ハッシュタグですね。ニコニコ動画だったと思いますが、中傷的な言葉のハッシュタグが付けられてたんですよ。

 でも裁判で、「ハッシュタグとは何か」を説明するのがとても大変で。

――2010年頃にハッシュタグの意味を理解させるのは、大変そうです。

清水 そのときの裁判官は高齢の女性だったんですが、書面で何回も説明しても、理解してくれなくて。

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 ハッシュタグって、自分で言葉を選んで投稿するものじゃないですか。ところが、その裁判官は「ハッシュタグは《検索》のためのタグだから、《投稿》とはいえない」などチグハグなことを言いだして。「いやいや、違うでしょ」と。

――(笑)。

清水 話が通じないんです。結局、こちらの言い分は何も理解されないまま、その裁判は負けました。そんな頃に比べたら、今はややマシですね。

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